PKSHA Workplaceは「AI-Powered Future Work」をビジョンに掲げ、誰もがAIに触れ、AIが日常業務に溶け込む未来の働き方について日々検討しています。お客様にとってより良い環境を実現するためには、社内において未来の働き方を模索できる場があることが重要であると考え、プロダクトの将来的な提供価値を探索するMinsky (ミンスキー)チーム(※)という部隊を昨年発足しました。同チームは、ドッグフーディング体制を確立し、独自の取り組みを推進しています。
今回、Minskyチームはセールスチームの定常業務における課題に焦点をあて、PKSHA Workplaceが提供する「PKSHA AI ヘルプデスク for Microsoft Teams(以下、PKSHA AI ヘルプデスク)」の新機能「ドキュメント型チャットボット」を活用できる環境の構築を目標に、新たな取り組みに挑みました。「AI-Powered Future Work」の実現に向け、一歩先の未来の働き方をお客様に伝えることを目指した取り組みの全貌について、中心となってプロジェクトを推進したチームメンバー3名が語ります。
(※)Minskyチーム……社内におけるPKSHA AIヘルプデスクのユースケースを検証し、将来的な提供価値を探索することを目的とする部署横断型のチーム。自社のプロダクト理解を深めることを目的に社歴の浅いメンバーを中心に構成されている。「Minsky」は人工知能の父と呼ばれるアメリカのコンピューター科学者の名前に由来。
バックオフィス向けSaaSを提供する企業にてインサイドセールスの立ち上げ、マーケティング組織の立ち上げを推進後、CEOとして代理店販売管理SaaSやマーケティング支援を提供する会社の立ち上げを経験。現在は、株式会社PKSHA WorkplaceのMarketing Sales部にて、PKSHA AI ヘルプデスクのマーケティングに従事。また、本記事で紹介する検証チームのリーダーを務める。
近畿大学大学院総合理工学部エレクトロニクス系工学専攻 修士課程を修了。大学院では、映像検索アルゴリズムを研究。2023年4月に新卒としてPKSHA Workplaceに入社し、PKSHA AIヘルプデスクの開発に従事。サービス間連携や生成AIを用いた新規機能の開発・運用を担当。また、本記事で紹介する検証チームでは技術的観点からのサポートと開発を務める。
自然言語系AIベンダーにてエンタープライズセールスを経験後、リーガルテック×AI‐SaaSのフィールドセールスとして主にミッドマーケットの新規開拓を担当。現在はPKSHA Workplaceのフィールドセールスとしてエンタープライズ企業向けAI-SaaSソリューションの拡販に従事。また、本記事で紹介する検証チームではプロジェクト推進の中核を担う。
――今回の取り組みが始まった背景について教えてください。
飯田:私たちMinskyチームは、社内にドッグフーディング体制を確立することを目指す部署横断型のチームです。お客様への提供価値を探索することを目的とし、「PKSHA AIヘルプデスク」のユースケースを検証しています。
三田村:今回の取り組みでは「PKSHA AIヘルプデスク」に新しく搭載された「ドキュメント型チャットボット」機能の社内活用の場を作ることが主な目標となりました。そのうえで、私たちはお客様と最も近しい立場にいる、セールスチームの課題解決に焦点を絞ることに。これはセールスチームの業務がAIによって効率化できることを自ら実感してもらうことで、実体験に基づく魂のこもった商談ができるようになることを目指して決めた方針です。
――セールスチームにおける「ドキュメント型チャットボット」の活用という軸から取り組みが始まったんですね。そこからどのようにプロジェクトを進めていったのでしょうか。
三田村:まずはインサイドセールスとフィールドセールスの定常業務の中で、メンバーがどんなことに困っているのかヒアリングしました。そこから出てきた課題の中で今回取り上げることにしたのは、インサイドセールスがお客様に送る際の最適なメール文面の作成と、フィールドセールスがお客様と商談をする際の事前準備にかかる工数の削減です。このほかにも契約書チェックや見積り作成の自動化などのアイデアも上がってきていたのですが、「ドキュメント型チャットボット」で技術的に解決できる課題は何か、という観点で課題を絞っていきました。
――ヒアリングした課題をどのような形に落とし込んでいったのでしょうか。
三田村:両者の課題をさらにブレイクダウンしていくと、事例検索やその要約・整理といったところに業務工数がかかっていることがわかってきました。そのため、お客様の業界・業種ごとにどんな課題があって、それに対してどのようなアプローチをしたのかという事例を「ドキュメント型チャットボット」によって検索できるようにすれば、それぞれの業務を効率化できると考えたのです。このアイデアにセールスメンバーから共感を得たうえで、営業資料と事例を読み込ませて、検索を通じてニーズに応じた導入事例や企業情報を出せるものを作ろう、という大枠の方向性が決まっていきました。
▲Minskyプロジェクトの概要
▲PKSHA AI ヘルプデスクのドキュメント型チャットボット
ちなみに、従来のチャットボットではFAQ管理に一定のメンテナンスコストがかかるものです。一方、この「ドキュメント型チャットボット」によるセールスイネーブルメントのアイデアは、過去の定常業務で培われた事例やマニュアルがすでにあるので、そこをベースにすることでデータの準備の工数が削減できることも評価できるポイントでした。
こうしたコンセプトを作るのと同時に、ユーザーの使いやすさを高めるためのアイコンづくりも進めていきました。今回の「ドキュメント型チャットボット」を活用した検索には、アイコンとなるキャラクター「ドク」を設定しています。
藤岡:私たちはただ特定の機能が使える状態を社内に作るだけでなく、それがユーザーに活用されることを目指しているので、親しみやすいアイコンなどの要素をつくりこむことも重要だと考えています。ちなみにこの「ドク」を作るとき、私はイラストを描くためのプロンプトのアイデアを出しながら、実際に形にしていく部分に携わりました。
――課題抽出やコンセプト設計はBizメンバーが、技術的なアウトプットに関わる部分はエンジニアがという分担で進めていったんですね。それぞれどのような役割を果たしていたのか、飯田さん、藤岡さんからも補足をお願いします。
飯田:私はプロジェクトマネジメントの観点から、ヒアリングして出てきた課題が技術的に解決可能なのか、またどういった検証が必要なのかを洗い出し、その検証に求められる適切なメンバーに協力を仰いだり、アクションに落とし込むためのサポートをしたりしていました。
藤岡:飯田さんがエンジニアとして関わる私に負担がかかりすぎないよう、プロジェクトマネジメントの立場から適切なフォローと調整をしてくださっていたのがありがたかったです。そのうえで、私は今回やりたいことの要件を技術的に満たせるか検証したり、Web上にある事例をドキュメント化するためのスクリプトを書いたりしていました。
飯田:プロジェクトを滞りなく進めるうえでは、誰が何をいつまでに確認して、どこまで準備しておくのかを明確にすることは大前提だと思っています。それを踏まえたうえで、社内検証を進めるときには、私たち以外にもさまざまな部署のメンバーの協力が必要です。今回の取り組みではセールスメンバーの課題解決を目標としているのですが、プロセスによってはCX(カスタマーサクセス部門)の方に検証環境を作っていただくなどの、協力を仰いだりすることもありました。そういったときに他チームとのやり取りを進めて、必要に応じたメンバーのリソース確保などをしていきました。
三田村:ちなみにここには登場していませんが、前職でインサイドセールスを経験している檜山さんというメンバーが、どんな検索をかけることが想定されるか掘り出して意見をくださったことも、ユーザーの使いやすさをより高める要因となりました。まずはプロジェクトメンバー内で適切に運用できるか検証した後、対象者であるインサイドセールスとフィールドセールスを担うメンバーに実際に触れてもらい、フィードバックを回収するという流れで進めていきました。
――メンバーそれぞれの役割や強みが活かされたうえでプロジェクトが進んでいったことがわかりました。実際この取り組みを推進してみて、どのような気付きがありましたか。
藤岡:ソフトウエアエンジニアとして「ドキュメント型チャットボット」そのものの開発には携わっていましたが、実際ユーザーにどのように使われていくのか今回の取り組みを通じて知ることができたのが良かったところです。例えば、検証プロセスで実際に検索をかけてみたとき、生成AIに慣れているエンジニアの検索方法と、いわゆるGoogle検索のような通常の検索に慣れている人の検索方法には、大きなギャップがあるのだと気付けました。
飯田:こういう形でプロダクトに関わったり、機能の活用法を考えたり、それが仕組みとして社内に実装されたりする経験は、それぞれふだんの業務で所属しているチームに閉じているとなかなか経験できないことです。Minskyチームが社歴の浅いメンバーを中心に構成されているのは、新入社員がプロダクトの理解を深めることを狙ってのことなのですが、入社して間もないタイミングでこういった取り組みに挑戦できるのもPKSHAらしいところかもしれません。
――今回の取り組みを通じて、セールスチームからはどのような反響がありましたか。
三田村:一番大きかったのは、「こんなに使えるんだ」という驚きの声です。「ドキュメント型チャットボット」をセールスチームが自ら使える環境を整えたことで、今後ユーザーとなるお客様ができることとできないことを、メンバー自ら体感してもらうことができました。メンバーが新機能の理解を深めることに、今回の取り組みが寄与できたという手応えを感じています。また、藤岡さんが一緒にプロジェクトを進めてくれたことで、技術観点を踏まえた説明の根拠を共有できる体制が整ったとも感じています。検証におけるPDCAを回していく際には、実際に出てきたアウトプットに対して〇×評価を行い、×のものに関しては、なぜそういった結果が出たか藤岡さんに原因を訊くことで、技術的理解を深めていくことができました。
藤岡:「ドキュメント型チャットボット」には生成AIの技術が使われているのですが、通常のソフトウェアと比べると、制御が難しい部分があるというか、想像した通りの結果が返ってこないことも往々にしてあります。その原因の細かな切り分けは、ソフトウエアエンジニアでないとなかなか分析しきれません。そこについてのフィードバックを共有することも、私が今回の取り組みで担った役割のひとつでした。
――今回の取り組みを経て、今後Minskyチームはどのような展望を描いていますか。
飯田:今回、私たちは「ドキュメント型チャットボット」の活用という軸を設定し、セールスチームの課題をどのように解決するかを考え、AIによるセールスイネーブルメントのひとつの形を見いだすことができました。これを今後よりお客様への提供価値に結びつけていくためには、お客様の業務や課題、解決したあとの理想の状態を先に洗い出し、その先に今回作ったようなものを導きだしていく経験を重ねることも重要です。
Minskyチームが発足して約半年が経ち、今回の取り組みでも一定の成果が得られたことで、ドッグフーディング体制の確立という目標には大きく近づけたと感じています。この体制を基盤として、今後は一層市場に対して価値の高い検証をしていきたいです。
今回作ったAIセールスイネーブルメントはあくまで一例で、これよりももっと市場のニーズが大きい活用法もあるでしょう。そういった市場価値の高い検証にも取り組むと共に、検証のスピードを速めることで、より多くのドッグフーディングの機会を作ることが今後の展望です。また、そこから得られたAI活用のイメージを積極的に外部に発信していくことで、社会全体に「AI-Powered Future Work」のビジョンを広げていきたいです。
――「AI-Powered Future Work」の実現に向けて、今回の取り組みはどのような影響をもたらしますか。
藤岡:「AI-Powered Future Work」のあるべき姿については、私たち自身もまだ模索している部分はありますが、アルゴリズムによるアシストを受けて働くスタイルは、間違いなく「AI-Powered Future Work」のひとつの答えになると考えています。とはいえ、AI活用を通じてすべての業務が突然一変するというのは現実的ではありません。まずは小さく始めて、少しずつ大きく育てていくのが理想だと思います。
今回の取り組みは、それこそ小さく始めてフィードバックをいただいている段階ですが、やがてドキュメントを増やし、より多くの事例を検索できるようになるというポテンシャルを考えれば、大きく育っていく可能性が十分あるものです。そのため、今回の取り組みは「AI-Powered Future Work」に向けた一歩という意味でもとても貴重な挑戦だったと思います。
――最後に、どのような方であればPKSHAで活躍できるかお聞かせください。
飯田:PKSHAは部署の垣根にこだわらず、新しいことに挑戦できる方が向いている環境だと思います。今回のプロジェクトを振り返ると、私自身入社して間もないタイミングでリーダーを務めることになり、他部署の方々と共に未来の働き方を想像しながら、それを創り上げる経験を得られたことに大きな手応えを感じました。未来の働き方について考えることを楽しめる人、未来に向けた活動が好きな人は、きっとMinskyチームの活動も楽しめるはずです。
藤岡:PKSHAのバリューのひとつである「クレジットサイクル(信頼のうねり)」を作っていける方にぜひ来ていただきたいです。私は今回のMinskyチームの活動を通じて、自分自身ができることを起点に誰かとつながり、コミュニケーションを取りながら信頼の幅を広げていくことを実感できました。
三田村:「One for All, All for One」の精神がある方であれば、誰でも活躍できるとお伝えしたいです。PKSHAのメンバーは、より良い職場環境を作ることに対して全員積極的で、何か困っていることがあれば協力しあってやろうというカルチャーが浸透しています。だからこそ今回のような取り組みも活発ですし、それを成し遂げられる環境が整っているとも感じています。今回の記事を読み、「AI-Powered Future Work」の実現に向けてチャレンジしていきたいと感じた方と共に働けることを楽しみにしています。