オウンドメディアをどのように運用していくべきか、成果を挙げるにはどうすればよいのか悩んでいませんか?オウンドメディア運営目的は多岐にわたるため、「こうすれば必ずうまくいく」といった決定的なノウハウやセオリーを見出しにくいのが実情です。
今回は、オウンドメディア運用に必要な取り組みと成功させる5つのコツについて、オウンドメディア運用の目的を踏まえて解説します。オウンドメディアの運用に際してよくある悩みとその解決策もあわせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
オウンドメディアを運営する目的は、企業や事業内容によって大きく異なります。一方で、運営目的が明確に定まっていないオウンドメディアが成功を収める確率は極めて低いといわざるを得ません。まずは一般的なオウンドメディアの運用目的を押さえ、自社にとってなぜオウンドメディアが必要なのかを明確化しておきましょう。
オウンドメディアは新規顧客の獲得に効果的な施策といえます。特定の商品やサービスを訴求するLPなどを制作した場合、企業名や商品名を直接検索して訪問する見込み顧客はごく一握りです。すでにニーズが顕在化している見込み顧客を取り込むことはできるものの、新規顧客を継続的に獲得するのは困難な状況に陥りやすくなります。
オウンドメディアは特定の商品やサービスを直接的に訴求するのではなく、関連するテーマやトピックに興味関心のあるユーザーに訪問してもらうためのメディアです。たとえばクラウド会計ソフトを訴求したいのであれば、経理や税務に関わる業務を効率化したいと考えているユーザーにとって有益な情報を発信することにより、会計ソフトの活用が有効な解決策となり得る事実に気づいてもらえるでしょう。結果として新規契約へとつながり、売上伸長に寄与する施策となるのです。
潜在顧客を掘り起こし、継続的に関係性を築いていくこともオウンドメディアの重要な目的の1つです。潜在顧客の多くは、自身がどのような課題を抱えているのか、課題をどうすれば解決できるのか明確に認識していません。課題を顕在化させ、ニーズに気づいてもらうにはリードナーチャリング(顧客育成)に取り組む必要があります。
たとえば、本業の合間を縫って経理業務を進めるのは負担が大きいと感じている個人事業主がいるとします。こうした個人事業主の多くは、どうすれば仕訳や記帳をより楽に効率よく進められるのか知りたいと考えるでしょう。仕訳のポイントや記帳の効率的な進め方について有益な情報を得られることで、情報源となったメディアに信頼を寄せるようになります。信頼するメディアが経理業務を効率化する方策として「会計ソフトの活用」を挙げていたことがきっかけとなり、会計ソフトの導入を検討し始める可能性があるのです。
オウンドメディアにアップロードされていくコンテンツを、自社の資産にしていくことも運用の大きな目的の1つです。そもそもオウンドメディアは「トリプルメディア」の1つです。トリプルメディアには、オウンドメディアの他にペイドメディアやアーンドメディアがあります。
《トリプルメディアとは》
・ペイドメディア:リスティング広告など広告費を投じて情報を発信するメディア
・アーンドメディア:SNSや口コミサイトなどユーザーが発信源となるメディア
・オウンドメディア:自社が主体となって運営し、情報を発信するメディア
上記のうち、公開するコンテンツを自社でコントロールでき、コンテンツが資産として蓄積されていくのはオウンドメディアのみです。ペイドメディアは広告費の投下をやめれば広告も停止してしまいます。アーンドメディアは情報の発信源がユーザーのため、発信される情報を自社側でコントロールすることはできません。オウンドメディアは長期的に運営を継続し、コンテンツ量が増えるほど資産価値が高まっていくメディアといえます。
次に、オウンドメディアの基本的な運用方法を確認しておきましょう。オウンドメディアは自社が保有するメディアのため、運用方法についても各社が自由に決められます。ただし、オウンドメディアとしての効果を十分に引き出し、成功させるには基本を押さえておくことが重要です。オウンドメディア運用の基本的な進め方を10ステップで紹介します。
前述の通り、オウンドメディアの運用目的は多岐にわたります。自社がとくに注力したいのはどのポイントであるのか、明確に絞り込んでおく必要があるでしょう。
たとえば、オウンドメディアの運用目的が「潜在顧客との信頼関係構築」であるのか、「商品の認知度向上」であるのかによって、発信すべき情報の方向性は大きく異なります。運営チーム内で目的の共有ができていないと、せっかく信頼関係が構築されかけていたユーザーに対して唐突に商品を訴求してしまい、ユーザーに敬遠されてしまうといった事態にもなりかねません。自社が解決すべき課題は何か、なぜオウンドメディアを運用するのかを十分に深掘りし、明確化しておくことが重要です。
次に、オウンドメディアの運用目的を元にメディアとしてのコンセプトを検討します。運用目的とコンセプトが一致していることが非常に重要なポイントです。
また、メディアコンセプトはペルソナ設定と表裏一体の関係にあります。誰に向けて発信するのか、ペルソナが求めている情報は何かを並行して考えていくことにより、コンセプトが絞り込まれていくでしょう。ペルソナは「30代男性」のように漠然とした人物像ではなく、職業や家族構成、ライフスタイル、趣味などを具体的に想定しておくことが大切です。コンセプトおよびペルソナは、後述するキーワード選定においても重要な判断軸となります。誰に何を届けるためのメディアにするのか、この段階でしっかりと固めてください。
メディアのコンセプトとペルソナが決まったら、同様の層に向けて情報を発信していると思われる競合メディアを調査しましょう。各メディアの特徴やコンテンツの傾向、サイトデザイン、カテゴリ設定など、参考になる点が多々あるはずです。ペルソナの視点に立って競合メディアを分析し、どのようなアプローチでユーザーとの関係性を構築しているのかチームで意見交換を行うことをおすすめします。
自社が想定しているメディアコンセプトに近いサイトが極端に少ないようなら、そもそもユーザーニーズが限られている可能性があります。反対に競合メディアが多すぎる・強すぎる場合には、それらのメディアとは異なる角度からアプローチする必要があるでしょう。
競合メディアの分析を通して、ペルソナのニーズや検索意図に対する解像度が高まったことでしょう。競合メディアの調査結果を踏まえつつ、自社メディアが攻めていくキーワードを選定します。キーワードの選定基準は「需要があるかどうか」です。自社が伝えたいメッセージに該当するキーワードのうち、実際に需要があるキーワードはどれかを特定していく必要があります。キーワードはオウンドメディアの成否を大きく左右する重要事項のため、じっくりと時間をかけて選定してください。
キーワードの選定時には「Googleキーワードプランナー」や「ラッコキーワード」といったツールを活用することをおすすめします。検索ボリュームやサブキーワード、共起語などをキーワードごとに列挙し、優先順位を決めていくのがポイントです。
選定したキーワードやサブキーワードを元に、コンテンツのテーマを作成していきます。オウンドメディアは中長期にわたる施策のため、まとまった量のテーマをあらかじめ用意しておくほうが得策です。予定している更新頻度にもよりますが、少なくとも2〜3カ月分程度のテーマを用意しておくとよいでしょう。
テーマが決まったら、各テーマに沿って構成案を作成していきます。ユーザーが求めている情報が記事内で網羅されるよう、見出しを決めていくのがポイントです。コンテンツ制作を外部へ委託する場合にも、はじめのうちは構成案を提示し、慣れてきたら構成案の作成も含めて依頼するとスムーズに進めやすくなります。
構成案を元にコンテンツ制作を進めていきます。各見出し内をPREP法で記述していくことにより、ユーザーにとって理解しやすいコンテンツとなるでしょう。
【PREP法の基本】
・結論
・理由
・具体例
・まとめ
1つの見出しに対して結論は1つに絞り、複数のトピックを1つの見出し内に混在させないことも大切なポイントです。外部ライターに委託する場合には適宜フィードバックを行い、注意点を共有していくとコンテンツ制作をスムーズに進めやすくなります。
コンテンツのチェックが完了したら、いよいよリリースです。立ち上げたばかりのオウンドメディアは認知度が低いため、初期段階ではほとんど閲覧されない可能性もあります。コンテンツの充実化を図り、有益な情報を豊富に発信しているメディアとして認知されていくにつれて、検索順位も上昇していくでしょう。
コンテンツは公開がゴールではなく、公開後に効果測定を行い、検証や改善に取り組むことが大切です。週に1〜2回はキーワードの順位計測を実施し、狙い通りの効果が表れているか確認していくことをおすすめします。
コンテンツ公開後2カ月ほど経っても検索順位が上がらない・むしろ下がってしまうといった状況であれば、キーワードの妥当性を検証する必要があります。
【キーワードの妥当性を検証する際の観点】
・そもそもニーザーニーズに合致したキーワードが選定できているか
・キーワードとコンテンツが合致しているか
・キーワードが自然な形で使用されているか(唐突感や不自然さはないか)
なお、「ビッグキーワード」と呼ばれるような大勢のユーザーが検索しているキーワードの場合、競合が多くなりやすく対策も難化しがちです。関連性の高いキーワードのうち検索ボリュームが低めのものを狙ったり、組み合わせるサブキーワードを変えたりすることで、よりきめ細かく検索ニーズをくみ取っていくとよいでしょう。
オウンドメディアの成果地点となる「資料請求」や「問い合わせ」といったユーザー行動を促すポイントをCTA(Call To Action)といいます。たとえば、「資料請求はこちら」といったテキストリンクや、「問い合わせ」ボタンなどがCTAの代表例です。
CTAを設置する位置や数によって成果が大きく変動するケースも少なくありません。検索流入数が順調に増加しているにもかかわらず、具体的な成果につながっていないようならCTAの改善を検討しましょう。コンテンツの流れに合わせてCTAの設置場所を変えるなど、ユーザーの視点に立って改善を重ねていくことが大切です。
リリース済みのコンテンツの中には、時間の経過とともに情報が古くなったり、不足している情報が出てきたりするケースがあります。たとえば、法改正に伴い制作当時とは異なる注意点が追加された場合や、紹介しているツールの新機能がリリースされた場合などは、ユーザーが最新情報を得られなくなってしまうからです。
既存コンテンツを定期的に見直し、必要に応じてアップデートしましょう。具体的には、記事をリライトしてブラッシュアップすることが大切です。競合メディアも既存コンテンツのアップデートを重ねている可能性があるため、定期的に競合メディアもチェックし、自社メディアに不足している情報があれば追記していくことをおすすめします。
オウンドメディアの運営を成功させるには、どのような点を意識しておく必要があるのでしょうか。成功に必要な5つのコツを見ていきましょう。
オウンドメディアの運用方針は企業によってさまざまですが、成功するメディアに共通しているのは「経営課題に直結する運営目的を定めていること」です。オウンドメディアありきではなく、企業として解決したい課題が先にあり、課題を解決するための手段としてメディアを運営していくという共通認識を形成する必要があります。
ここでいう経営課題とは、直近の業務で直面している課題とは限りません。中長期の事業計画や経営方針に鑑みて、現状とのギャップを埋めるための課題を抽出しておく必要があります。「どのようなメディアをつくるべきか」を検討するための前提として、「どのような経営課題を解決すべきか」を明確にしておくことが非常に重要です。
オウンドメディア運営の目的達成を着実に目指すには、定量的かつ検証可能な成果指標を掲げることが大切です。端的に表現するなら「いつまでに」「何を」「どれだけ」実行するのか、それによって目指す効果をそれぞれ具体的な数値で設定する必要があります。
たとえば「1年以内に問い合わせ件数を現状の2倍に増加させる」という目標(KGI:重要目標達成指標)を掲げたとします。KGIを達成するには月あたり平均どれだけの問い合わせ件数が必要になるのか算出できるでしょう。月ごとの目標を達成するために必要なコンテンツ数やアクセス数を試算し、それぞれにKPI(重要業績評価指標)を設定します。検証可能な成果指標を定めておくことにより、改善が必要な施策が可視化されるのです。
ユーザーインテントとは、各ユーザーの検索意図のことです。あるテーマについてユーザーが検索する際、背景にはさまざまな心理が潜んでいます。多くの潜在顧客に訪問してもらい、オウンドメディアに信頼を寄せてもらうには、ユーザーインテントを意識することが大切です。
たとえば、経理担当者が「入金 消し込み 効率化」というキーワードで検索した場合、現状の入金確認と未入金一覧の消し込み作業を負担に感じていることが想定されます。この担当者が知りたい情報は表面的には「効率化するための作業方法」ですが、入金情報と連動した消し込み作業自体の自動化が可能なツールの存在を知ることができれば、そのほうがニーズに合致しているでしょう。このように、ユーザーが真に求めている情報は何か、深層心理を探っていくのがポイントです。
オウンドメディアの成果を左右するのはコンテンツの質だけではありません。サイト全体の構造を最適化し、ユーザーが知りたい情報にアクセスしやすい作りにしておくことも非常に重要です。
オウンドメディアが扱うテーマを大カテゴリに分け、大カテゴリ内で共通するトピックを小カテゴリにまとめます。さらに各コンテンツ内に関連するトピックを閲覧できる内部リンクを設置することにより、ユーザーは知りたい情報をより深く理解しやすくなるのです。サイト構造の最適化はユーザーの利便性を向上させるだけでなく、検索エンジンの評価を高める上でも重要な考え方といえます。
オウンドメディアの運用を維持・継続させていくには、必要なリソースや体制を整備しておく必要があります。コンスタントにコンテンツ制作を進め、サイトを更新し続けられるだけの人員や予算、業務時間を割り出し、担当者の人数や分担を決めましょう。
現実的には、運用担当者が各自の担当業務と兼務せざるを得ない場合もあるはずです。本業が忙しい時期にもオウンドメディアの運用がなおざりにならないよう、業務量の調整や人員の補充も視野に入れて検討しておくことをおすすめします。中長期の施策となるオウンドメディア運用を成功させるためにも、必要なリソース確保と体制整備に取り組んでおくことが大切です。
オウンドメディアを運用していく中で、担当者が抱えやすい悩みとその解決策をまとめました。よくある悩みの解決方法を知り、安定的な運用を継続していきましょう。
長期間にわたってメディアを運用していく中で、コンテンツのテーマが尽きてしまうケースは決して少なくありません。当初予定していたキーワードを使い切ってしまい、新たに制作すべきコンテンツが思い浮かばなくなることもあるでしょう。
BtoBオウンドメディアで陥りやすい状況として、「自社にとっての当たり前」と「世の中における一般的な当たり前」の間にギャップが生じることが挙げられます。オウンドメディア担当者自身には業務知識がすでに備わっているため、潜在顧客が知りたがっている重要な情報を見過ごしやすくなるのです。
ユーザー目線に立ったコンテンツ制作を維持するには、既存顧客から寄せられた質問事項や問い合わせ内容を参照したり、営業担当者に商談の様子をヒアリングしたりするとよいでしょう。潜在顧客が疑問に感じるポイントを把握しやすくなり、コンテンツのテーマを設定するためのヒントを得られるはずです。
オウンドメディアの運用には相応の時間や労力を要します。コンテンツを継続的に制作し、メディアを更新していくための時間や余力を確保できなくなってしまうことも、よくある運用上の悩みの1つです。担当者が他業務と兼務している場合には、この傾向がいっそう顕著に表れやすくなります。
リソース不足の悩みを解消するには、オウンドメディアの運用全般を外部委託することも視野に入れておくとよいでしょう。コンテンツの制作だけでなく、テーマ発案や構成案作成、公開後の効果測定、改善策の提案・実行、既存コンテンツのアップデートなど、一連の流れで発生する作業を一括で委託するのも1つの方法です。
マーケティング会社や制作会社へ委託することにより、良質なコンテンツを継続的に無理なく制作できる点が大きなメリットです。一方で、自社のニーズや課題を共有するには綿密な打ち合わせが必要となります。オウンドメディア運用の豊富な実績があり、かつヒアリングを丁寧に実施している委託先を見つけることが大切です。
オウンドメディアは短期的な成果につながる施策ではないことから、社内の関係部署や上層部の理解を得られないケースは少なくありません。売上に直結する事業が優先されてしまうことも多く、十分な予算が確保できないなど、施策の存続そのものが危うくなる可能性も否定できないのです。
社内の理解を得るには。そもそもオウンドメディアがどういった目的で運用されるものか、中長期的に取り組むことでどのようなメリットを得られるのかといった点を、事前にしっかりと伝えておく必要があります。社内プレゼンを実施する際には、中長期的な取り組みが前提となる施策であることを強調しておくべきでしょう。
また、運営上のKGI・KPIを明確に定め、進捗状況について定期的に報告・共有することも大切です。そのためには、オウンドメディア運営に関わる担当者間で目標やゴールをしっかりと共有し、目的意識を持って運用していくことが求められます。
オウンドメディアの運用にあたっては、目的とゴールを明確に設定し、メディア運用によって得られる効果を十分に理解しておくことが非常に重要です。中長期的にわたる取り組みとなることから、企画段階やリリースに向けた準備期間だけでなく、リリース後も定期的にオウンドメディア運用の意義や目的を共有していく必要があるでしょう。
今回紹介した運用の基本的な進め方と5つのコツを参考に、ぜひオウンドメディアの継続的な成長を目指してください。オウンドメディアを通して有益な情報を発信していくことにより、潜在顧客の発掘につながる強力なツールとなっていくはずです。