マーケのカチスジ マーケティングの事例とノウハウがここに

ブランディングの表現方法とは?デザインの手法と考え方を解説

作成者: 土田 琢磨|Feb 8, 2024 6:00:00 AM

ブランディング施策を成功させるには、ブランドのメッセージや世界観を表現し、生活者に広く伝えていく必要があります。ここで重要になるのが、ブランドをいかに表現するかという点です。

 

今回は、ブランディングの表現方法と、適切に表現するための手順についてわかりやすく解説します。ブランドの表現方法を検討する際の注意点とあわせて見ていきましょう。

 


ブランディングの表現に必要な3つの要素

ブランディングの表現といっても、ブランドロゴやキャッチコピーを表層的に制作すればよいというものではありません。どのような方法でブランドを表現する場合にも、次に挙げる3つの要素を満たしている必要があります。

ターゲットの理解と感情への訴求

ブランディングを成功させるには、生活者の心に残り、記憶に刻まれる表現方法を実現することが重要です。そのためには、単に魅力的な装飾を施すだけでは十分とはいえません。「誰に」「何を」伝えるのかを明確化しておく必要があるでしょう。

あらゆる手紙は読み手を想定して書かかれているように、ブランディングを表現する際にもターゲットの理解が不可欠です。ターゲットを決定した上で、ターゲット層の価値観やライフスタイルなどへの理解を深めておくことが大切です。ブランドメッセージを情報として伝達するだけでなく、相手の感情に訴えることを意識してください。

競合との差別化とポジショニングの確立

世の中にはすでに数多くのブランドが存在しています。既存のブランドと似たような価値提供をしているようでは、膨大な種類のブランドに埋もれてしまうでしょう。競合する他のブランドと重ならない、独自の立ち位置を確立する必要があります。

競合との差別化と自社独自のポジショニングは、常にセットになっていると捉えてください。競合ブランドの調査・分析を行うことで自社だからこそ可能な価値提供が明らかになり、自社の強みや独自性を打ち出すことが差別化につながるのです。

五感に訴えるブランディングデザイン

ブランドのコンセプトやメッセージがどれほど優れたものであっても、それらが適切な方法で表現されていなければ生活者に伝わりません。ブランドが醸し出す独自の雰囲気や世界観を的確に表現し、ターゲットに伝わる方法でデザインする必要があります。

ブランディングの表現方法は多種多様です。五感に訴えられる表現方法であれば、基本的にすべてブランディングデザインになり得ると捉えてください。ブランディングの表現と聞くと「ロゴの制作」「キャッチコピーの作成」といったイメージを抱くかもしれません。しかし、実際のところブランディングの表現方法は多岐にわたっているのです。

ブランディングを表現するためのメディア

ブランディングを表現するためのメディアには、大きく分けて「抽象的ブランドメディア」と「可視的ブランドメディア」の2つがあります。それぞれのメディアの特徴を押さえておきましょう。

抽象的ブランドメディア

抽象的ブランドメディアとは、ブランドアイデンティティを象徴する要素のことを指します。ブランドの根底にあるコンセプトや一貫して伝えていくべきメッセージなどは、抽象的ブランドメディアの代表例です。

後述する可視的ブランドメディアと比べると、抽象的ブランドメディアには物理的な形がありません。そのため成果物の制作など、成果が明確にわかる可視的ブランドメディアの構築から着手するケースが少なくないのが実情です。抽象的ブランドメディアをきちんと確立しておくことは、一貫したブランドメッセージを発信していく上で非常に重要なポイントといえます。

可視的ブランドメディア

可視的ブランドメディアとは、ブランドロゴやキャッチコピーといった目に見える具体物としてブランドを表現したものを指します。ファストフードの包装紙や、ドリンクのカップにロゴが印刷されていることでブランド独自のイメージが想起されるのは、可視的ブランドメディアが有効に機能している好例です。

可視的ブランドメディアはデザインなどの視覚的な要素で表現されるため、ともするとブランディングを表現する唯一の方法と思われがちです。しかし、優れたブランド施策には必ず抽象的ブランドメディアが先に存在し、それらを表現するための手段として、可視的ブランドメディアが活用されている点を見落とすべきではないでしょう。

ブランディングの5つの表現方法

ブランディングの代表的な表現方法を紹介します。ブランドアイデンティティの象徴となるメッセージやデザインを表現するための手段を見ていきましょう。

ブランドロゴ

ロゴはブランドの「顔」に相当する、基本的かつ象徴的な要素といえます。ロゴのデザインや色、テイストといったあらゆる視覚的要素に、ブランドが発信するメッセージが集約されているのです。ブランドロゴを制作する際には、次に挙げる2点を考慮する必要があります。

 

・ブランドの理念や提供価値、特徴などを象徴する印象的な外観になっているか

・さまざまな媒体・サイズで使用することが想定されているか

 

一般的に、看板など大型の媒体に使用する場合も、パッケージや封筒など限られたスペースで使用する場合にも見栄えのするロゴにするには、シンプルなデザインにすることが重要です。

キャッチコピー

キャッチコピーとは、ブランドのメッセージや世界観を象徴する端的な言葉を指します。プロモーション施策などに用いられるセールスコピーとは本質的に異なる点に注意してください。インパクトがあり印象に残ることは重要な要素ではあるものの、ブランディングにおけるキャッチコピーは売り込むことを目的としていないからです。

実際、有名なキャッチコピーは具体的な商品名が含まれていないものがほとんどです。企業や商品の特徴や長所を訴求するのではなく、根底にあるブランドメッセージを象徴する言葉を掲げましょう。

パッケージ

商品パッケージは、生活者に自社ブランド商品を見つけてもらう・認知してもらう上で重要な役割を果たします。実際に購入してパッケージを開封するまで、商品そのものを手に取って確認することはできないからです。

ロゴやキャッチコピーと同様、パッケージに関しても目立つデザインやカラーほど効果的というものではありません。むしろ、どの商品からも一貫したメッセージが感じられるかどうか、シンプルで直感的にそのブランドの商品と認識できるデザインになっているかどうか、といった要素が求められるでしょう。

ブランドムービー

ブランドのコンセプトやストーリーを映像化したものをブランドムービーといいます。映像であれば視覚・聴覚に訴える表現が可能になるため、文字や静止画では伝えきれないブランドの魅力を発信しやすくなるでしょう。生活者の印象に残りやすいことから、ブランドを認知してもらうための入口として有効です。

ブランドムービーのようにメッセージを印象づけ、認知を拡大することを目的とする広告をブランディング広告といいます。これに対して、商品などの短期的な売上アップを実現するための広告がレスポンス広告です。ブランディング広告はレスポンス広告とは異なり、短期間で効果が明確に表れるものではありません。よって、成果指標を明確にした上で中長期的な取り組みとして実践していくことが重要です。

ブランドサイト

ブランドサイトとは、ブランドのコンセプトやストーリーを伝えることを目的としたWebサイトのことです。コーポレートサイト(企業の公式サイト)はどのような企業かを知ってもらうために制作されるのに対して、ブランドサイトはブランドの認知拡大という目的に特化して制作される点が大きく異なります。

パッケージに印刷した二次元コードからブランドサイトを訪問してもらうなど、さまざまなブランディングの表現方法と組み合わせて活用することも可能です。すでにコーポレートサイトを公開している企業であっても、新たにブランドサイトを立ち上げる意義は十分にあるでしょう。

ブランディングを適切に表現するための手順

ブランディングの表現は、本来形のないコンセプトやイメージを具現化する作業であることから、しかるべき手順を踏んで進めていくことが大切です。ブランディングを適切に表現するための手順を確認しておきましょう。

1. 提供可能な価値と求められている価値のすり合わせ

ブランディングを表現するための準備段階として、「提供可能な価値」と「求められている価値」をすり合わせておく必要があります。双方にミスマッチがあると、ターゲットは求めていたイメージとの間にずれを感じ、かえって離脱を招く原因となりかねないからです。

実際、企業側が抱いていた自社のブランドイメージと、消費者が想起・期待するブランドイメージとの間に乖離が見られるケースは少なくありません。自社にとってブランドイメージを象徴するキーワードをいくつか列挙した上で、必要に応じて消費者への調査を実施し、自社が想定していたキーワードと重複するものをピックアップしておきましょう。

2. イメージに合うデザイン・ビジュアルの分析

次に、ピックアップしたキーワードのターゲットとなる層を特定します。ターゲット層が重なっている他ジャンルの商材や訴求方法を分析し、ブランドイメージの系統にマッチしたデザイン・ビジュアルの例を収集していきましょう。

このプロセスを踏むのは、自社が抱いているブランドイメージに引きずられるのを防ぐためです。無意識のうちに「当社のブランドはシンプルで洗練されたイメージ」といった先入観を抱いており、ブランディングの表現が先入観に影響される可能性があります。多くの事例に触れることで、客観的な視点を取り入れておくことが大切です。

3. 分析結果のとりまとめ

1ですり合わせたキーワード別に、2で収集したビジュアルを分類していきます。キーワードごとにイメージボードを作成し、画像を貼っていくと視覚的に確認しやすいでしょう。

ここで作成したイメージボードは、続く工程でデザイン制作を進める際の参考資料となるだけでなく、複数名で構成されるプロジェクトやチームにおいてイメージを共有するためのツールにもなります。ビジュアル全体から受ける印象だけでなく、色・タイポグラフィ・キャッチコピーなど、具体的にどの点がイメージ形成に寄与しているのかを明確にしておくことが重要です。

4. 分析結果をデザインに落とし込む

3で分類した要素ごとにデザインへと反映させながら、ブランドロゴやパッケージデザインといった具体物を制作していきます。キーワードに対応するビジュアル要素を取り入れるだけでなく、全体のバランスが調和するよう調整を行いましょう。

デザイン案はいくつか制作し、複数名で協議した上で最もブランドのコンセプトやイメージに近いものを選出することをおすすめします。選出したデザイン案をさらにブラッシュアップし、ブランドを象徴する可視的ブランドメディアに仕上げてください。

5. ブランドアイデンティティの確立

ブランドアイデンティティとは、統一されたブランドイメージを発信するためのガイドラインに相当します。使用する色やフォント、サイズや比率といったルールを決め、資料にまとめておくとよいでしょう。

ブランドアイデンティティを確立しておくことにより、担当者によってイメージにずれが生じたり、依頼するデザイナーごとに成果物の印象が異なったりするのを防ぎやすくなります。一貫した訴求を実現するには、共通のガイドラインに則って制作していくことが大切です。

ブランディングの表現方法を検討する際の注意点

ブランディングの表現方法を検討する際に、注意しておくべき点について解説します。よく陥る失敗パターンでもあるので、次の2点を必ず押さえておきましょう。

手段と目的を履き違えないようにする

ブランドロゴやパッケージデザインといった成果物は、あくまでもブランドのイメージやコンセプトを表現するために制作されるものです。制作そのものがゴールではなく、冒頭でお伝えした「ターゲットの感情に訴求すること」「自社ブランド独自のポジショニングを確立すること」「五感に訴えるブランディングを実践すること」が本来の目的であることを忘れないようにしてください。

ブランディング戦略構築の一環として捉える

デザインはビジュアルを「点」で捉えるのではなく、ブランディング戦略の一環として「線」で捉えることが重要です。デザイン・ビジュアルありきで考えるのではなく、先にブランディング戦略があり、戦略を具現化する方法の一つとして成果物を位置づけてください。この前提に立って制作を進めた場合、必然的に前掲の5つの手順に沿って成果物を制作していくことになるはずです。

まとめ

ブランディングを表現するロゴやキャッチコピー、パッケージデザインなどは、生活者の目に直接触れる重要な要素となります。一方で、目に見える具体物として制作されるため、ともするとデザイン表現そのものがブランディング施策であるかのように錯覚しかねません。今回紹介した手順や注意点を参考に、「ブランドを表現するとはどういうことか?」を念頭に置いて制作を進めることが大切です。

 

ネオマーケティングでは、ブランド戦略の構築に必要な調査・分析から施策実行までワンストップで支援しています。ブランディングの表現方法についてお悩みの事業者様は、ブランド戦略の設計とあわせてぜひネオマーケティングにご相談ください。