ロゴはブランドの「顔」に相当する、基本的かつ象徴的な要素といえます。ロゴのデザインや色、テイストといったあらゆる視覚的要素に、ブランドが発信するメッセージが集約されているのです。ブランドロゴを制作する際には、次に挙げる2点を考慮する必要があります。
・ブランドの理念や提供価値、特徴などを象徴する印象的な外観になっているか
・さまざまな媒体・サイズで使用することが想定されているか
一般的に、看板など大型の媒体に使用する場合も、パッケージや封筒など限られたスペースで使用する場合にも見栄えのするロゴにするには、シンプルなデザインにすることが重要です。
キャッチコピー
キャッチコピーとは、ブランドのメッセージや世界観を象徴する端的な言葉を指します。プロモーション施策などに用いられるセールスコピーとは本質的に異なる点に注意してください。インパクトがあり印象に残ることは重要な要素ではあるものの、ブランディングにおけるキャッチコピーは売り込むことを目的としていないからです。
実際、有名なキャッチコピーは具体的な商品名が含まれていないものがほとんどです。企業や商品の特徴や長所を訴求するのではなく、根底にあるブランドメッセージを象徴する言葉を掲げましょう。
パッケージ
商品パッケージは、生活者に自社ブランド商品を見つけてもらう・認知してもらう上で重要な役割を果たします。実際に購入してパッケージを開封するまで、商品そのものを手に取って確認することはできないからです。
ロゴやキャッチコピーと同様、パッケージに関しても目立つデザインやカラーほど効果的というものではありません。むしろ、どの商品からも一貫したメッセージが感じられるかどうか、シンプルで直感的にそのブランドの商品と認識できるデザインになっているかどうか、といった要素が求められるでしょう。
ブランドムービー
ブランドのコンセプトやストーリーを映像化したものをブランドムービーといいます。映像であれば視覚・聴覚に訴える表現が可能になるため、文字や静止画では伝えきれないブランドの魅力を発信しやすくなるでしょう。生活者の印象に残りやすいことから、ブランドを認知してもらうための入口として有効です。
ブランドムービーのようにメッセージを印象づけ、認知を拡大することを目的とする広告をブランディング広告といいます。これに対して、商品などの短期的な売上アップを実現するための広告がレスポンス広告です。ブランディング広告はレスポンス広告とは異なり、短期間で効果が明確に表れるものではありません。よって、成果指標を明確にした上で中長期的な取り組みとして実践していくことが重要です。
ブランドサイト
ブランドサイトとは、ブランドのコンセプトやストーリーを伝えることを目的としたWebサイトのことです。コーポレートサイト(企業の公式サイト)はどのような企業かを知ってもらうために制作されるのに対して、ブランドサイトはブランドの認知拡大という目的に特化して制作される点が大きく異なります。
パッケージに印刷した二次元コードからブランドサイトを訪問してもらうなど、さまざまなブランディングの表現方法と組み合わせて活用することも可能です。すでにコーポレートサイトを公開している企業であっても、新たにブランドサイトを立ち上げる意義は十分にあるでしょう。
ブランディングを適切に表現するための手順
ブランディングの表現は、本来形のないコンセプトやイメージを具現化する作業であることから、しかるべき手順を踏んで進めていくことが大切です。ブランディングを適切に表現するための手順を確認しておきましょう。
1. 提供可能な価値と求められている価値のすり合わせ
ブランディングを表現するための準備段階として、「提供可能な価値」と「求められている価値」をすり合わせておく必要があります。双方にミスマッチがあると、ターゲットは求めていたイメージとの間にずれを感じ、かえって離脱を招く原因となりかねないからです。
実際、企業側が抱いていた自社のブランドイメージと、消費者が想起・期待するブランドイメージとの間に乖離が見られるケースは少なくありません。自社にとってブランドイメージを象徴するキーワードをいくつか列挙した上で、必要に応じて消費者への調査を実施し、自社が想定していたキーワードと重複するものをピックアップしておきましょう。
2. イメージに合うデザイン・ビジュアルの分析
次に、ピックアップしたキーワードのターゲットとなる層を特定します。ターゲット層が重なっている他ジャンルの商材や訴求方法を分析し、ブランドイメージの系統にマッチしたデザイン・ビジュアルの例を収集していきましょう。
このプロセスを踏むのは、自社が抱いているブランドイメージに引きずられるのを防ぐためです。無意識のうちに「当社のブランドはシンプルで洗練されたイメージ」といった先入観を抱いており、ブランディングの表現が先入観に影響される可能性があります。多くの事例に触れることで、客観的な視点を取り入れておくことが大切です。
3. 分析結果のとりまとめ
1ですり合わせたキーワード別に、2で収集したビジュアルを分類していきます。キーワードごとにイメージボードを作成し、画像を貼っていくと視覚的に確認しやすいでしょう。
ここで作成したイメージボードは、続く工程でデザイン制作を進める際の参考資料となるだけでなく、複数名で構成されるプロジェクトやチームにおいてイメージを共有するためのツールにもなります。ビジュアル全体から受ける印象だけでなく、色・タイポグラフィ・キャッチコピーなど、具体的にどの点がイメージ形成に寄与しているのかを明確にしておくことが重要です。
4. 分析結果をデザインに落とし込む
3で分類した要素ごとにデザインへと反映させながら、ブランドロゴやパッケージデザインといった具体物を制作していきます。キーワードに対応するビジュアル要素を取り入れるだけでなく、全体のバランスが調和するよう調整を行いましょう。
デザイン案はいくつか制作し、複数名で協議した上で最もブランドのコンセプトやイメージに近いものを選出することをおすすめします。選出したデザイン案をさらにブラッシュアップし、ブランドを象徴する可視的ブランドメディアに仕上げてください。
5. ブランドアイデンティティの確立
ブランドアイデンティティとは、統一されたブランドイメージを発信するためのガイドラインに相当します。使用する色やフォント、サイズや比率といったルールを決め、資料にまとめておくとよいでしょう。
ブランドアイデンティティを確立しておくことにより、担当者によってイメージにずれが生じたり、依頼するデザイナーごとに成果物の印象が異なったりするのを防ぎやすくなります。一貫した訴求を実現するには、共通のガイドラインに則って制作していくことが大切です。
ブランディングの表現方法を検討する際の注意点
ブランディングの表現方法を検討する際に、注意しておくべき点について解説します。よく陥る失敗パターンでもあるので、次の2点を必ず押さえておきましょう。
手段と目的を履き違えないようにする
ブランドロゴやパッケージデザインといった成果物は、あくまでもブランドのイメージやコンセプトを表現するために制作されるものです。制作そのものがゴールではなく、冒頭でお伝えした「ターゲットの感情に訴求すること」「自社ブランド独自のポジショニングを確立すること」「五感に訴えるブランディングを実践すること」が本来の目的であることを忘れないようにしてください。
ブランディング戦略構築の一環として捉える
デザインはビジュアルを「点」で捉えるのではなく、ブランディング戦略の一環として「線」で捉えることが重要です。デザイン・ビジュアルありきで考えるのではなく、先にブランディング戦略があり、戦略を具現化する方法の一つとして成果物を位置づけてください。この前提に立って制作を進めた場合、必然的に前掲の5つの手順に沿って成果物を制作していくことになるはずです。