ブランディングとは、プロダクトやサービス、それらを提供する企業に対して統一されたイメージを浸透させ、企業価値の向上や競争優位性の確保を実現することをいいます。さまざまな種類のブランディングについて、成功事例と成功のポイントをまとめました。自社でのブランディング施策を検討する際にぜひ参考にしてください。
ここからは、ブランディングの成功事例を戦略別に紹介していきます。はじめに紹介するのは、商品ブランディングで成功を収めた事例です。
ベーシックな服としての地位を確立
ファストファッションブランドの代名詞とも称されるA社は、シンプルで機能的・価格が手頃というコンセプトに一貫してこだわり抜き、そのイメージを国内外に浸透させた事例として広く知られています。単に価格が安いというだけでなく、ベーシックな服としての地位を確立したことにより、年齢や性別を問わず広く親しまれるブランドへと成長を遂げたのです。コンセプトを貫いたことが功を奏した商品ブランディングの事例といえるでしょう。
顧客ニーズの本質を深掘り
調理器具の製造・販売を手がけるB社では、調理器具そのものの販売ではなく料理を楽しんでもらうことをブランドの最終ゴールに設定しています。質の高い調理器具を買い求める顧客の多くは、料理を楽しみたいからこそ調理器具にこだわっているというニーズの本質を捉えたのです。表層的な購買行動に注目するのではなく、その背景にある顧客の心理や本質的なニーズを深掘りすることの重要性を示唆した事例といえます。
徹底した品質へのこだわり
果物店を営むC社では、仕入れ時の徹底した目利きと品質管理により、「行列ができる果物店」という独自のポジションを貫いています。大量仕入れ・大量販売をあえて避け、品質にこだわり続ける姿勢は多くの顧客から熱烈に支持されており、「C社で買ったフルーツなら間違いない」「(他店より価格が高くても)C社で買いたい」といった定評を得ているのです。大規模なスーパーマーケットなどには真似のできない、自社の強みを打ち出した商品ブランディングの好例といえるでしょう。
サービスブランディングの成功事例
インナーブランディングの成功事例
企業ブランディングの成功事例
次に、企業全体のブランディングの成功事例を見ていきましょう。企業全体の価値を打ち出し、浸透させるためにどのような施策を講じたのでしょうか。
複数の企業が合併してできた新たな会社のブランディング
キッチンや浴室の設備を製造・販売するJ社は、5社の統合を経て設立された企業です。その後もアメリカやドイツ、インドといった国々の企業を買収してきました。統合・買収後は各社のブランドが混在している状態でしたが、ブランドの統一を強行するのではなく、子会社のブランド力や認知度を活かした戦略を講じている点が大きな特徴です。複数の企業を擁するグループにおいて、参考になる企業ブランディングの事例といえるでしょう。
周年を機に新たなロゴを開発
コンビニチェーンを展開するK社では、創業50周年を機に新たなロゴを開発しました。長年にわたって浸透してきたブランドイメージを踏襲しつつ、循環型社会の実現や地域との共創といった現代的なテーマを加味しています。企業ブランディングは、企業としての歴史が長い場合も短い場合もなんらかのきっかけが欠かせないものです。周年を機に「周年ロゴ」を開発するアイデアは、他業種においても応用できるのではないでしょうか。
事業拡大に伴いロゴを整理
ITサービスを提供するL社では、事業拡大に伴い各サービスのロゴを整理しました。70以上のサービスを事業の規模や領域を元に分類し、サービスの特性ごとにカラーグループを体系化した他、すべてのサービスがL社のコーポレートブランドと結びつくようイメージの統一化を図ったのです。個々のサービスをブランド化するのではなく、1つのマスターブランドに集約したことが、結果としてブランディングの成功につながった事例といえるでしょう。
リブランディングの成功事例
リブランディングは既存ブランドのイメージ転換を図る必要があるため、他のブランディング施策とは異なる工夫や施策が求められます。具体的な成功事例を見ていきましょう。
ブランドステートメントを商品コンセプトに反映
農業機械の開発・販売を手がけるM社は、1世紀以上にわたる長い歴史のある企業です。近年は建設機械やマリンインダストリー、エネルギーといった分野へ事業の多角化を図ってきました。
企業の実態に即したイメージチェンジを図るべく、プロダクトデザインに第一線で活躍するデザイナーを迎え入れました。ブランドステートメントを商品コンセプトにも反映させる施策により、親しみやすい印象から先進的な企業へと着実にイメージ変革を遂げつつあります。
車ではなくカーライフに軸足を置いたコンセプト
自動車メーカーのN社は、世界シェア2%を堅持すべく他社メーカーには見られない独自のリブランディング施策を講じました。車そのものの性能やデザイン性、快適性などを打ち出すメーカーが多い中、生活社一人ひとりの生き方や価値観を中心に据えたメッセージを発信し続けたのです。
たとえば、テレビCMでは車を利用する生活シーンをドラマ仕立てで描き、子どもの成長や夫婦の歴史といったカーライフの一幕を印象的に演出しています。同CMは多数の広告関連の賞を受賞し、幅広い層から熱烈な支持を得ました。
ターゲティング・ポジショニングの変更
製薬会社のO社では、主に男性向けに販売していた二日酔い対策の医薬品の販売が低迷していました。そこで、同薬剤の主成分に肌の代謝を助ける効用もあることに注目し、女性を対象とした美肌対策の医薬品として大幅なイメージ転換を図ったのです。
販売網についても大手ドラッグストアチェーンでの販売に注力し、消費者が手軽に購入しやすい仕組みを整えました。商品のターゲティング・ポジショニングを大胆に変更したことにより、リブランディングを成功へと導いた好例といえるでしょう。
BtoBブランディングの成功事例
採用ブランディングの成功事例
採用ブランディングと一口に言っても、その手法は多種多様です。求職者の認知を高め、イメージアップを図ることに成功した3つの事例を紹介します。
社員紹介を主体としたオウンドメディア運営
フリマアプリや金融サービスを提供するS社では、オウンドメディアにて自社で働く従業員に関する記事を創刊から1,000本以上公開しています。メディアの読者は同社の雰囲気やそこで働く方々の様子を知った上で、応募すべきかどうかを検討できるのです。
実際、応募者の多くは同メディアを閲覧して「ここで働きたい」と感じているケースが少なくありません。自社の認知を高めるだけでなく、入社後のミスマッチを回避するための施策としても功を奏しています。
徹底的に「人」を大切にするスタンス
菓子メーカーのT社では、徹底的に「人」を大切にするスタンスを貫くことで独自のブランドを確立しています。従業員は70歳まで雇用延長できることに加え、定年退職後の元従業員には独自の企業年金を支給するなど、徹底的に従業員を守る姿勢を大切にしてきました。
結果として、T社には地域の若者から応募が毎年のように殺到しており、人気の就職先となっています。採用ブランディングの根底には従業員満足度があり、従業員満足度を徹底して高めることが採用活動の成功へとつながることを証明した好例です。
理念共感型採用の実施
ウェディング事業やレストラン事業を手がけるU社では、自社の理念や価値観に共感してくれる人のみ採用するという方針を徹底しています。面接時には応募者の価値観を知るための質問を多数投げかけ、自社の価値観と一致している人だけを採用しているのです。
ブランディングにはさまざまな種類がありますが、いずれもブランドを創っていくのはそこで働く一人ひとりの従業員である点は共通しています。U社の理念共感型採用は、採用ブランディングから企業・サービスブランディングまでを一貫した施策として捉えている事例といえるでしょう。
まとめ
ブランディングを成功させるための施策に「正解」はなく、各社が知恵を絞って自社の強みや魅力を打ち出していることがおわかりいただけたのではないでしょうか。今回紹介した事例を参考に、自社が強化すべきブランディングの種類と講じるべき施策についてぜひ検討してください。さまざまな企業の成功事例に触れることが、新たなアイデアを生み出す重要なきっかけとなるかもしれません。