ブランディングに取り組むにあたって、外部の事業者に依頼するケースは多いことでしょう。一方で、費用はどの程度かかるのか気になっていた担当者の方もいるはずです。
今回は、ブランディングの主な依頼先と費用感、依頼の流れについてわかりやすく解説します。ブランディングを成功に導くコツとともに見ていきましょう。
ブランディングに関する業務を依頼できる事業者として、主に3パターンが想定されます。
・制作会社
・広告代理店
・コンサルティング会社/マーケティング支援会社
それぞれの特徴とおおよその費用感を押さえておきましょう。
ロゴデザインやWebサイト構築など、制作業務を中心に請け負う事業者です。すでにブランディングの戦略や具体的な施策がほぼ固まっており、制作物を準備する段階に入っているようなら、制作会社に依頼するのは一つの選択肢といえます。
一般的な費用感としては、100万〜300万円程度です。これまでの実績や担当デザイナーなどに応じて費用が変動する傾向があります。制作会社によっては特定の業界や商品を中心に対応しているケースもあるため、得意とする分野や領域を確認した上で依頼先を決めることが大切です。
ブランディング戦略の策定から実際の制作・施策実行までを請け負う事業者です。とくに広告施策による訴求や認知拡大を重視したい場合に適した依頼先といえます。すでに実行した施策の方向性が定まっており、より具体的に戦略を詰めていきたい場合は広告代理店への依頼がおすすめです。
一般的な費用感としては、300万〜600万円程度のケースが多く見られます。広告代理店によって「インターネット広告が得意」「マス広告を多く手がけてきた」など得意とする領域が異なるため、自社が想定している施策に強い広告代理店を選ぶのがポイントです。
経営戦略や事業戦略と連動した、抜本的なブランディングにも対応可能な事業者です。大規模な調査やプロモーション施策を通じて、認知拡大を狙いたい場合などに適しています。マーケティング支援会社であれば、たとえば上市前の商品をコンセプト策定の段階から依頼し、広告表現の提案・実行まで並走してもらえるケースもあるでしょう。
費用感としては、600万〜1,000万円以上かかることが想定されます。デザインや制作に関してはパートナー企業へ依頼するケースが多いことから、相応の費用が必要です。ブランディングをトータルに手がけてほしい場合におすすめの依頼先といえます。
ブランディングを外部の事業者に依頼する場合、具体的にどのような費用がかかるのでしょうか。主な費用の内訳を紹介します。
ブランディングに取り組むにあたって、抱えている課題や注力すべき領域は企業ごとに大きく異なります。課題の抽出やブランディング戦略の構築に向けて継続的なサポートを行うための費用がコンサルティング料と捉えてください。中長期的にサポートする必要があるケースがほとんどのため、一般的には月額制の料金体系となります。費用の目安は月額10〜30万円程度が相場です。
ただし、コンサルティング料は依頼先や自社の課題感によって変動する傾向があります。3カ月〜1年程度の最低契約期間が設けられているパターンが多く見られるため、事業者ごとの得意分野や実績を十分に確認した上で依頼することが大切です。
決裁権をもつ人物も含めてワークショップに参加できることも、重要なメリットの1つといえます。ブランディングに関わるさまざまな部署・ポジションの人材が一堂に会して実施することで、ブランディングの方向性や戦略の決定に至ったプロセスを共有できるのです。
ブランディングの企画や戦略は、熟慮を重ねた結果としてアウトプットのみを提示しても理解されにくいケースが少なくありません。プロセスも込みで体験してもらうことにより、有意義な提案とスムーズな決裁が実現できる可能性が高まります。
ブランドを象徴するコピーを制作するための費用です。費用の相場は数万〜100万円程度を想定しておく必要があるでしょう。ブランドメッセージそのものやブランドストーリーも込みで依頼する場合には、より高額な費用がかかることも想定されます。
コピーは一見すると短い文言に過ぎないように映るかもしれません。しかし、コピーにはブランドの理念や世界観などが凝縮されている必要があるため、制作にはブランドメッセージやターゲットに対する本質的な理解が不可欠です。単にインパクトのある言葉や耳当たりの良い言葉を提案してもらうことがコピー制作ではない点に注意してください。
ブランドを視覚的に表現したロゴや商品パッケージを制作するための費用です。費用の目安としては、数万〜50万円程度が相場と捉えてください。依頼先や担当者の実績、提案数、求めるデザインの複雑さなどによって、費用には幅があります。
ロゴや商品パッケージは、ブランドの「顔」となる非常に重要な要素の一つです。制作そのものにかかる費用というよりも、ブランドへの深い理解や自社の理念・ビジョンをデザインに反映させるための費用と考えるのが適切でしょう。裏を返すと、ロゴ制作や商品パッケージ制作のみを格安で引き受けるような事業者やクリエーターに依頼するのは避けたほうが無難です。
オンラインにおいてブランドの「顔」となるのがWebサイトです。費用は50万〜1,000万円程度が相場と捉えてください。Webサイトの規模や実装する機能、求めるデザイン性などに応じて費用は大きく異なります。
コピー制作やロゴ制作などと同様、Webサイト制作に関しても単にWebサイトを構築するだけであれば低価格で依頼することも可能です。一方で、発信するべきブランドメッセージや生活者に想起してほしいブランドイメージをすり合わせ、ブランド理念を本質的に理解した上で制作するには相応の工数と時間がかかります。Webサイト制作を依頼できる事業者は非常に多く存在するため、ブランディング施策の一環としてWebサイト制作を位置づけている事業者かどうかを十分に確認しておく必要があるでしょう。
ブランドストーリーやブランドイメージを動画で表現する場合の制作費です。費用は10万〜200万円程度が相場と捉えてください。動画に使用する素材や尺によって費用には幅があります。
動画は視覚・聴覚に訴える効果が非常に高いことから、視聴した人がブランドに対して抱くイメージを決定づける可能性が十分にあります。動画制作そのものにかかる費用だけでなく、ブランドとして打ち出したいメッセージや世界観を十分に理解していなければ効果的な動画は制作できません。よって、現実的にはコンサルティング料もあわせて支払うことになるケースが大半でしょう。
ブランディングを依頼する際の流れについて解説します。依頼先や依頼内容によって詳細は異なりますが、基本的な流れは次のとおりです。
依頼先の候補をWebサイトなどで探し、数社をピックアップしておきましょう。各社の実績や得意分野を確認した上で、実際に問い合わせる事業者を絞り込んでいきます。問い合わせ先が決まったら、Webサイトのコンタクトフォームや電話で連絡し、順次打ち合わせの日時を設定してください。
重要なポイントとして、複数社に問い合わせることが挙げられます。Webサイトなどに記載されている限られた情報量から、事業者ごとの正確な実績や得意分野を見極めるのは容易ではありません。実際に担当者と話してみなければわからないこともあるため、はじめから1社に絞り込まないことが大切です。
事業者との打ち合わせでは、自社についてできるだけ詳しく正確に知ってもらうことが大切です。事業の方向性や抱えている課題のほか、予算や想定している期間、予定している制作物などを伝えましょう。事業者に提示する資料をあらかじめ作成しておくのが得策です。
優良な事業者であれば、まずはクライアントの課題や想定しているブランディング施策について詳細な情報を求めるでしょう。クライアントが実現したいブランディングのあり方を正確に把握しなければ、適切な戦略の策定や要望に合った施策実行ができません。打ち合わせは、それぞれの事業者が対応可能な領域や業界・商品への理解度の深さを確認するための場と捉えてください。
打ち合わせの内容を踏まえて、複数社に見積もりを依頼しましょう。見積もりが提示されたら、作業領域に過不足がないか、費用と業務内容が釣り合っているかといった点を十分に確認する必要があります。見積もり内容に不明点や疑問点がある場合は、必ず問い合わせて解決しておくことが大切です。
とくに作業領域に関しては、契約締結後のトラブルに発展しやすいポイントのため入念にチェックしておくことをおすすめします。たとえば「コンサルティング料」と一口に言っても、コンセプト段階から最終的な広告表現まで並走してもらえるかどうかは事業者によって異なるからです。料金面で比較するだけでなく、対応可能な領域を十分に確認してください。
見積もりの内容に納得できたら、契約条件を詰めていきます。契約期間や報酬の支払い条件など、詳細を十分に確認しておくことが大切です。事業者によっては最低契約期間を定めていることも想定されます。途中解約する場合の条件についても、契約締結前によく確認しておきましょう。
ブランディングを成功に導くには、どのような点に留意する必要があるのでしょうか。とくに実践しておきたい5つのコツを紹介します。
ブランド力の向上を図ることによって何を実現したいのか、ブランディングに取り組む目的を明確にしておくことが重要です。最終的なゴール設定によって、依頼先の事業者が策定する戦略や実行すべき施策は大きく異なります。
依頼時には自社がブランディングに取り組む目的を十分に伝え、理解してもらう必要があります。施策の方向性をすり合わせるにあたり共通認識の形成が求められるだけでなく、何をもってブランディング施策の「成功」とするかを決めておかなくてはならないからです。
ブランディング施策の範囲をあらかじめ決めておくことも重要なポイントの一つです。主なブランディングの種類として、次のものが挙げられます。
・商品ブランディング
・サービスブランディング
・インナーブランディング
・企業ブランディング
・リブランディング
・BtoBブランディング
・採用ブランディング
たとえば、特定の商品をブランディングしたいのか、企業全体のブランディング(コーポレートブランディング)に取り組みたいのかによって、施策の範囲は大きく異なります。新たにブランディング施策を講じる場合と、既存のブランドを強化する場合も必要とされる施策はまったく異なるでしょう。自社が望んでいるブランディング施策の範囲を正確に伝えられるように準備しておくのがポイントです。
参考:ブランディングの事例21選と成功のポイントを戦略別に紹介
https://kachisuji.neo-m.jp/branding/04
ブランディング施策は非常に幅広いことから、あらかじめ注力すべき施策をある程度絞っておくことをおすすめします。ブランディングの目的から逆算し、必要な施策の優先順位をつけておきましょう。
事業者との打ち合わせを通じて、より良い施策を提案されるケースももちろんあるはずです。一方で、自社が注力したい施策を事前に伝えておくことによって、事業者側も核となる施策を決定しやすくなります。ブランディングを強化したいからといって、何もかも取り組もうとせず優先順位をつけて施策を講じていくことが大切です。
ブランディングを外部委託するといっても、すべての工程を丸投げするのは避けてください。あくまでも自社が今後長きにわたって育てていくべきブランドの構築が目的です。自社の資産を築くための重要な業務を、外部に丸投げするのは本末転倒と言わざるを得ません。
自社内にもブランディングチームやプロジェクトチームを設置し、自社が主導権を握って戦略策定や施策実行を進めていきましょう。専属チームを設置して窓口を一本化することは、事業者との確認や調整を最小限に抑える上でも重要なポイントといえます。
ブランディングを外部の事業者に依頼するには、まず自社がどのようなブランドを築き上げたいのか、何を目的にブランディング施策に取り組みたいのかを確認することが重要です。その上で、今回紹介した費用感や費用内訳を参考に適正な料金設定の事業者を選んでください。自社が目指すブランディングのあり方を深く理解してくれる事業者が見つかれば、非常に心強いパートナーとなるはずです。