ブランディング戦略を推進することで、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。
主な8つのメリットについて解説します。
自社ブランドや自社商品の認知度が向上する
自社ブランドや自社商品が広く認知されたとしても、望ましくないイメージが広がるのは避けたいところです。計画的にブランド認知を高め、自社が掲げるブランドイメージと消費者が抱くブランドイメージを一致させることにより、望ましい方向性で認知度を向上させられます。
誰もが知るブランド・商品になることで、業界やジャンルのスタンダードとして認知が定着していくでしょう。結果として「選ばれる」ブランド・商品となり、長期にわたって安定的な売上を確保できる確率が高まります。
競合他社との差別化につながる
ブランディング戦略の推進は、強力な差別化戦略にもなり得ます。生活者のエボークトセット(Evoked Set)に自社のブランドや商品が加わることにより、購入したい商品の有力効補として認知されるからです。
エボークトセット(想起集合)とは、あるジャンルの商品を買おうと思った際、頭に浮かぶブランドの集合体のことです。エボークトセットには生活者それぞれに選好パターンがあり、実際に購入する際にはこの中からランダムに選ばれています。したがって、エボークトセットに自社のブランド・商品が加わることは、重要な差別化要因となり得るのです。
マーケティング施策の効果が高まる
ブランディング戦略の推進は、マーケティング施策の効果を高める上でも有効です。ブランドや商品の認知度が高まれば、消費者への訴求をショートカットできます。消費者にとって、まったく知らないブランドの商品を購入するのは勇気がいることです。たとえ考え抜かれたキャッチコピーや商品パッケージで商品の良さや消費者のベネフィットを訴求していても、「聞いたことがないブランド」という点が購入の障壁となりかねません。
一方、すでによく知っているブランドであれば、「〇〇なブランド」というイメージが形成されています。さらに商品のメリットが伝わることにより、購入する理由が強化されるのです。
LTVが向上する
マーケティング戦略の推進は、LTVの向上にも寄与します。LTV(顧客生涯価値)とは、1人の消費者が自社の商品を利用し始めてから利用を終えるまでの期間に、企業にもたらした利益のことです。たとえば、1万円の商品を1回購入したきりの消費者よりも、3千円の商品を月1回のペースで何年間にもわたって購入している消費者のほうがLTVは高いといえます。
マーケティング戦略が功を奏することにより、消費者は愛着をもって自社商品を使い続けてくれます。他社商品に乗り換えることなく買い続けてくれる顧客が増えることにより、結果として売上が伸びていくのです。
価格競争に巻き込まれにくくなる
ブランドの認知度の高さは信頼性にも影響を与えます。実際、多くの消費者は一度も聞いたことがないブランドよりも、慣れ親しんだブランドのほうが信頼できると感じるものです。商品選定時の優先事項が「価格」ではなく「信頼」や「愛着」となるため、より安価な商品との価格競争に負けにくくなるでしょう。
価格競争に巻き込まれにくくなることは、持続可能な事業を築いていく上で非常に重要なポイントの1つです。値下げによって一時的に売上を伸ばすことはできても、値下げを繰り返すごとに利益が圧迫され、いずれ事業の存続そのものを脅かすことにもなりかねません。価格ではなく信頼性で勝負できるようになることは、ブランディング戦略を推進する大きなメリットといえます。
従業員エンゲージメントが向上する
ブランディング戦略の推進は、対外的なブランド認知だけでなく内部での意思統一にも効果を発揮します。認知を高めるべきブランドイメージを社内で共有することにより、自社ブランド・商品に対する認識が共有化・統一化されていくからです。
自社ブランド・商品に誇りをもって業務に取り組む従業員が増えていけば、おのずと従業員エンゲージメントも向上していくでしょう。業務の質が向上するほか、従業員の離職防止にも寄与するはずです。
ステークホルダーエンゲージメントが向上する
ブランド認知が高まっていくことで得られる効果は、対消費者だけではありません。投資家や金融機関といった多方面にわたる関係者の認知度・好感度が高まり、より有利な条件で出資や融資を受けられる可能性が高まります。
ステークホルダーには地域の住人や従業員の家族なども含まれています。多方面の直接的・間接的な利害関係者がポジティブなブランドイメージを抱くようになることで、事業を推進しやすい環境が整っていくでしょう。将来的に事業を拡大したり、多角化したりする際にも、ブランディング戦略によって築かれたイメージが功を奏する可能性があります。
安定的な売上基盤が確立できる
ブランドイメージが定着するにつれて、消費者の間で「定番商品」として認識されるようになります。その商品以外を選ぶことは風変わりな選択とさえ認識されるレベルになれば、ロングセラー商品になっていく可能性も十分にあるでしょう。
ロングセラー商品の存在は、企業にとって安定的な売上基盤の確立に大きく貢献します。定番商品であれば、多くの広告費をかけることなく「自然に売れていく」状況をつくれます。このように、ブランディング戦略は中長期的な事業戦略とも深く関わっているのです。