インサイドセールスとは、メールや電話を駆使した非対面型の営業手法のことです。外勤営業(フィールドセールス)と対をなすポジションとして位置づけられています。インサイドセールスの導入により、リードタイム(検討期間)が長期間にわたる商材であっても、見込み顧客の購買意欲が高まったタイミングでアプローチが可能です。また、近年は営業担当者の人手不足や働き方の多様化が加速しており、限られた人員で多くの顧客をカバーできるインサイドセールスに注目が集まっています。
今回は、インサイドセールス部門を0から立ち上げる際に必要な7項目について、それぞれのポイントをわかりやすく解説します。インサイドセールスの導入を検討している事業者様は、ぜひ参考にしてください。
インサイドセールスは非対面の営業手法であることから、外勤営業以上にターゲット市場の分析が重要なプロセスとして位置づけられます。興味関心をもってもらうためのアプローチや説得・交渉のハードルが高い分、潜在ニーズがある可能性の高い相手をターゲットに設定する必要があるからです。具体的には、次の手順でターゲット市場の分析を進めましょう。
STP分析
STP分析とは、自社が最も収益を上げられそうな集団を特定するための分析手法です。STPはセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングを表しています。多様なニーズのある巨大な市場を小さな単位に分割した上で、自社が闘うべきフィールドを見極める際に活用されています。
すでにフィールドセールス部門がある組織においては、インサイドセールス部門がターゲットとする顧客をより限られた範囲に設定することも想定されます。リードタイムが長い商材や、対象となる顧客数が多く同時並行で対応する必要があるケースなどは、インサイドセールス部門が引き受けるほうが得策でしょう。
アプローチ対象の決定
ターゲット層が特定できたら、次にインサイドセールス部門としてアプローチすべき対象を絞り込んでいきます。「イベント参加者」「資料をダウンロードしたユーザー」といったように、具体的な条件を設定しておくことが重要です。
アプローチ対象に曖昧な点が残っていると、業務範囲が不明確になったり、営業プロセスにブレが生じたりする原因にもなりかねません。具体的にどのようなケースにおいてインサイドセールス部門が見込み顧客への対応を担うのか、条件を明確にしておきましょう。
シナリオ設計
シナリオ設計とは、「どのようなシーンで」「どのような情報を提供するのか」「ターゲットの行動変容をどのように促すのか」を設計することを指します。たとえば、展示会で商品の実物を手にした見込み顧客と、Webサイトを見て問い合わせてきた見込み顧客に対して、同じ方法でアプローチするのは得策とはいえません。どのような手順を踏んで購買意欲を高めていくのか、具体的なタイミングと届けるべき情報、活用するチャネルを想定されるタッチポイントごとに設計しておく必要があります。
3. セールスプロセスのマッピング
4. ツールとインフラの構築
5. コンテンツ戦略の策定
インサイドセールスを成功させるには、顧客のフェーズに即したコンテンツ戦略を策定する必要があります。認知フェーズ、検討フェーズ、購入・継続フェーズに必要なコンテンツの例を見ていきましょう。
認知フェーズに必要なコンテンツ
認知フェーズにおいては、自社の商材について存在そのものを知ってもらうためのコンテンツが必要です。たとえば、オウンドメディアによる情報発信や、LPによる商品紹介などは、認知フェーズに適した媒体の好例といえます。
認知フェーズの見込み顧客は、そもそも自社やその商品・サービスについて知識や情報を保有していません。したがって、企業名や商品名を直接検索して調べる可能性は低いと考えられます。また、見込み顧客自身が課題に気づいていないこともあり得るため、課題の特定や明確化に役立つ情報を発信していくことが大切です。
検討フェーズに必要なコンテンツ
検討フェーズにおいては、見込み顧客にとって有益な情報や、継続的に受け取る意義のある情報を届ける必要があります。一例として、メルマガなどのプッシュ型メディアを活用し、定期的に有益な情報を届けるといった手法が有効でしょう。
検討フェーズの見込み顧客によっては、事業の状況や決算期などの関係で今すぐに商品・サービスを導入できないケースも想定されます。商品やサービスそのものに特段の懸念点や不満な点がなかったとしても、見込み顧客との接点が途切れることが機会損失につながる可能性もあるのです。今すぐに購買へとつながらない見込み顧客に対してきめ細かな情報発信を継続し、リードナーチャリングを進めていくことが求められます。
購入・継続フェーズに必要なコンテンツ
購入・継続フェーズにおいては、アフターフォローのための情報を発信していくことが求められます。メール配信や会員専用ページ・アプリなどを活用し、顧客との接点を維持していくことが大切です。
顧客数が増えていくにつれて、1件1件の顧客に個別の対応をするのが現実的に難しくなっていくことも想定されます。大半の顧客に関わりのある情報は一括で配信したり、セグメント配信を活用して企業規模や業種などの条件別に情報を届けたりすることにより、効果的な顧客フォローを効率よく実現できるでしょう。
6. パフォーマンス管理
インサイドセールスの効果を十分に引き出すには、パフォーマンス管理を適切に行うことも大切です。パフォーマンス管理において必要とされる、KPI設定・メトリクス設定・PDCAサイクルについて解説します。
KPIの設定
KPI(重要業績評価指標)とは、KGI(重要目標達成指標)の達成に必要とされる業績を定量的に把握するための指標です。インサイドセールスが果たすべき役割は、見込み顧客との深い信頼関係を築き、商談すべタイミングを見極めた上で、提案活動を行うフィールドセールスへ案件を引き継ぐことにあります。よって、次に挙げるようなKPIを設定し、進捗を管理していくことが求められるでしょう。
・コネクト数:アプローチしたい相手と直接会話ができた回数
・商談化件数:提案機会のアポイントから新たな商談へとつながった回数
・商談への貢献率:インサイドセールスが貢献した金額や商談化件数
これらのKPIを量の面だけでなく、質の面からもバランスよく管理していくことが重要です。
メトリクス(測定指標)の設定
メトリクスとは、さまざまな活動を定量化し、データ管理に活用できるように加工した測定指標のことを指します。インサイドセールスにおいては、見込み顧客にアプローチすべきタイミングを見極める基準を決定・共有し、メトリクスとして設定しておくことが重要です。
担当者ごとの判断によって商談化のタイミングに差異が生じることのないよう、見込み顧客の購買意欲をスコアリングし、スコアが一定水準に達したらアプローチへと移行する方法をおすすめします。担当者独自の感覚や経験則にもとづく判断に依存すると、業務の属人化やプロセスのブラックボックス化につながる恐れがあるため注意してください。
PDCAサイクルを回す
KPIの進捗管理とメトリクスのブラッシュアップを通じて、施策全体の精度向上を図っていくことが大切です。そのためには、ささいな課題や問題点を見落とさず、丁寧に拾い上げた上で改善を図っていく必要があります。
とくにインサイドセールスは非対面による営業手法のため、見込み顧客の反応がダイレクトに伝わりにくい傾向があります。各担当者が主体的に探しに行かなければ改善点が見つかりにくくなる可能性もあるため、短いスパンでPDCAサイクルを回せるよう、常に課題の共有と改善策の実行を繰り返していく必要があるでしょう。
7. 長期戦略の策定
インサイドセールスの立ち上げに際しては、長期戦略を策定しておくことが非常に重要です。なぜ長期戦略の策定が重要なのか、求められている戦略とはどのようなものか、詳しく見ていきましょう。
インサイドセールスにおける長期戦略の重要性
インサイドセールスは、そもそもリードタイムの長い商材を案件化することを主目的とする施策です。短期的な成果を求めるのではなく、長期的な活動を見据えて戦略を立てておく必要があります。
長期戦略の策定は、インサイドセールス担当者間で共通認識にもとづいて業務を推進するために必要となるだけではありません。他部門や経営層に、インサイドセールス導入の目的や期待される効果を正しく理解してもらうためにも重要なポイントです。立ち上げ直後から直近数年間の計画だけでなく、長期的な展望を踏まえた戦略を立てておくことが求められます。
インサイドセールス担当者の育成
インサイドセールスでは非対面による応対が中心となるため、応対の質が成否を分ける鍵となります。インサイドセールス担当者のスキル向上を継続的に図るよう、人材育成に向けた計画を立てておくことが大切です。
たとえば、MAやSFA、CRMといった各種ツールの活用方法や、データ分析のスキルを研鑽していくことが求められます。定期的に研修や勉強会を開催するなど、担当者がインサイドセールスに必要なスキル・能力を高めていける環境を整えましょう。
持続的な成長を促進する戦略へ
インサイドセールスが果たす役割には商談設定や案件化だけでなく、既存顧客との関係深化による満足度向上や顧客ロイヤリティ向上も含まれます。将来的なアップセルやクロスセルも見据えた戦略を構築することにより、長期にわたって業績に貢献できる可能性を秘めているのです。
国内の人口が減少へと転じ、新規顧客獲得が難化の一途をたどっている今、インサイドセールスは事業の持続的な成長を促進する可能性のあるセクションの1つとなり得ます。このように、インサイドセールスが組織内で果たす役割を俯瞰的に捉え、持続的な成長を促進する戦略を講じていくことが大切です。
まとめ
インサイドセールスを0から立ち上げるにあたって、検討・準備すべきことは多岐にわたります。今回紹介した7項目を参考に、ぜひインサイドセールスの成功に向けて着実に準備を進めてください。インサイドセールスが果たす役割や機能を十分に理解した上で立ち上げを進めることにより、組織にとって売上の柱となる重要なセクションへと成長していく可能性は十分にあるでしょう。