インサイドセールスにおけるKPIの設定手順
インサイドセールスにおけるKPIの設定手順について解説します。効果的な指標を掲げるためにも、基本的な手順に則ってKPIを設定していくことが大切です。
1. KPI項目の設定条件と定義を決める
KPIは表層的な目標値として定めるのではなく、背景となる条件や定義がきちんと共有されていることが非常に重要です。フィールドセールス部門やマーケティング部門など、隣接部門と合意しておくことが欠かせません。
たとえば獲得商談数をKPIとする場合、有効な「商談」の定義についてフィールドセールス部門との間で共通認識を形成しておく必要があります。インサイドセールス部門にとっては「商談を設定した」という認識であっても、フィールドセールス部門にとって商談とは呼べない段階だったとすれば、認識に大きな溝が生じかねないからです。この場合、有効商談としてカウントできる定義や条件について合意を形成しておく必要があるでしょう。
2. KGIから逆算して成果目標を設定する
KPIは現状を起点に決めていくのではなく、最終的に達成したい目標(KGI)から逆算して設定していくのがポイントです。売上目標など全社の事業目標を踏まえて、インサイドセールスに求められている成果を割り出し、必要なKPIを設定していくことをおすすめします。
ただし、最終的に達成すべきKGIと現状との間には少なからずギャップがあることも想定されます。過去の実績も考慮した上で、現実的なKPIを設定することも大切なポイントの1つです。理想とする成果を意識するあまり、非現実的なKPIを設定することのないよう注意してください。
3. 成果目標を元に行動指標を設定する
KGIから逆算したKPIは、あくまでも成果目標としての指標です。現場に下ろす際の目標値は、マネジメントの視点から部門のフェーズに合った数値に調整したものを共有することをおすすめします。
とくにインサイドセールス部門を立ち上げてから日が浅い場合、当初から高すぎる目標値を掲げてしまうと担当者が疲弊しやすくなります。このようなケースでは、まずは行動量に重きを置いた指標を設定し、徐々に成果目標へと軸足を移していくことが大切です。
インサイドセールス部門のフェーズ別KPI設定例
KPIの設定は、インサイドセールス部門のフェーズに合わせて検討する必要があります。インサイドセールス部門の立ち上げ期・安定期・成熟期の各フェーズに適したKPI設定例を見ていきましょう。
立ち上げ期:架電数・メール開封率
インサイドセールス部門の立ち上げ期には、架電数やメール開封率といった行動量・行動の結果に重きを置いたKPIを設定するのがおすすめです。まずは行動ベースでインサイドセールスの実務を軌道に乗せ、一定量の業務をこなすことを最優先していくとよいでしょう。
KPIは一つひとつ着実に達成していくことが重要です。複数のKPIを並行して設定した場合、どのKPIも達成できずPDCAを回せなくなるおそれがあります。部門の立ち上げ当初は行動量と行動の直接的な結果を重視したKPIを設定するのであれば、設定したKPIが達成できたことを確認してから次のフェーズへと移るようにしてください。
安定期:商談獲得数
インサイドセールス部門が軌道に乗る時期に入ったら、商談獲得数をKPIの軸とすることをおすすめします。成功パターンが蓄積されていくにつれて、商談獲得につながるノウハウも確立しやすくなっていくでしょう。闇雲に商談件数を追い求めるのではなく、ノウハウに裏打ちされた商談獲得が可能になっていく時期です。
商談設定の目標数を着実に達成できるようになれば、インサイドセールス部門に求められる基本的な機能は満たしているといえます。フィールドセールスによるフィードバックも参考にしつつ、商談獲得の精度を高めていきましょう。
成熟期:受注数/率・受注金額
インサイドセールス部門の成熟期においては、受注数/率や受注金額といった事業全体への貢献度を表す指標を重視していくことをおすすめします。これにより、商談獲得件数だけでなく成約につながるアポイントの質を重視する方向へとシフトしていくからです。
最終的な成果を見越して業務に携わっていくことは、インサイドセールス担当者のスキルアップを図る意味でも重要なポイントになります。部門としての質の向上を図り、事業全体への貢献度を高めていくことによって、インサイドセールス部門が組織にとって欠かせない存在になっていくはずです。
効果的なKPIを設定するためのポイント
インサイドセールスのKPIを効果的に設定するには、どのような点を意識する必要があるのでしょうか。とくに重要度の高いポイント3点を紹介します。
短期的なKPIの達成を目的化しない
KPIの設定はあくまでも目標達成の手段であり、KPIを達成すること自体が目的ではありません。KPIの達成そのものが目的化してしまうと、成果を急ぐあまりニーズの把握やリードとの関係構築が疎かになり、インサイドセールス部門として果たすべき役割が曖昧になってしまうおそれがあります。
そもそもリードの育成には時間がかかるものであり、短期的な成果を求めるのは得策ではありません。KPIを設定する際にも、長い時間軸で施策を捉えて指標を決めていくことが大切です。
定量的な成果だけでなく定性的な側面も重視する
KPIを着実に達成していくには振り返りを随時行い、PDCAを回していく必要があります。その際、定量的な成果だけでは具体的な改善点が見えにくくなりかねません。定性的な側面も重視することによって、施策の質を高めていく視点も重視してください。
たとえば獲得商談件数が伸び悩んでいる場合、リードへの対応方法やリードの流入経路といった定性情報に改善のヒントが隠れている可能性があります。こうした定性情報も記録・蓄積していくことで、施策の改善策に役立てていくことが大切です。
適切な時期にKPIの設定を見直す
インサイドセールスのKPIは一度設定すれば永続的に変えないものではなく、定期的に見直していく必要があります。前述のとおり、インサイドセールス部門としてのフェーズによって重視しておきたい指標は異なるからです。また、目標と実績に乖離が見られた場合にも、原因を見極めた上で適宜KPIを再設定する必要があるでしょう。
KPIを見直す時期を見極める方法として、設定したKPIが無理なく達成できているかどうかを重視することをおすすめします。設定したKPIを着実に達成した上で、次の段階へと進んでいくのが得策です。