オウンドメディアを開設したいと思っているものの、どのようなメディアにするべきかイメージが固まらず悩んでいませんか?あるいは、すでにオウンドメディアを運営しているものの、コンテンツの方向性が定まらないといった悩みを抱えていた方もいるでしょう。
今回は、オウンドメディアの成功事例20選を一挙に紹介していきます。BtoB・BtoC・採用強化の目的別に、それぞれのオウンドメディアの特徴と主な成功要因を解説していますので、ぜひ自社メディアの方向性を定める際の参考にしてください。
オウンドメディアを運営する意義と「成功」の定義
オウンドメディアは自社の商品やサービスを直接的に訴求するためのメディアではないことから、中長期的に運営していく意義を十分に確認しておくことが重要です。また、そもそもオウンドメディア施策における「成功」とはどのような状態なのかを把握しておく必要があるでしょう。はじめに、オウンドメディアを運営する意義と「成功」の定義について解説します。
オウンドメディアを運営する意義とは
オウンドメディアを運営する意義は、大きく2つの視点で捉えられます。
1.潜在顧客を見込み客へと引き上げる
2.見込み客の顧客化・ファン化を促す
自社の商品・サービスをすでに認知しており、明確にニーズのある見込み客であれば、商品LPや自社Webサイトを直接訪問してくれるでしょう。しかし、商品LPや自社Webサイトでは自社や、その商品自体を認知していない潜在層にリーチするのは難しいのが実情です。
オウンドメディアは、商材と関わりの深いテーマで有益な情報を発信することにより、潜在顧客を取り込むための手法といえます。また、見込み客の信頼を獲得し、顧客化・ファン化を促すことも重要な役割の1つです。このように、オウンドメディアは潜在顧客や見込み客にアプローチするための施策といえます。
オウンドメディア施策における「成功」とは
オウンドメディア施策が何をもって「成功した」と呼べるのかを明確にしておくことも大切なポイントです。商品やサービスの販促用媒体ではないからこそ、具体的な成果地点を意識しておく必要があります。
オウンドメディア施策における究極の「成功」は、自社が抱えていた経営課題の解決につながることです。安定的な売上基盤の形成が課題であれば、オウンドメディアを通して継続的なリード獲得につなげることが目標となるでしょう。あるいは、ブランディング強化が課題の場合、オウンドメディアを通して自社を認知し、信頼を寄せるようになった見込み客をどれだけ創出できるかが鍵を握ります。このように、オウンドメディア施策における自社の「成功」について、あらかじめ明確に定義しておくことが大切です。
オウンドメディアの成功事例10選【BtoB編】
BtoBにおけるリード獲得やブランディングに、オウンドメディアが寄与している事例を紹介します。コンテンツの傾向やメディアとしての特徴から、成功要因を探っていきましょう。
①freee株式会社「経営ハッカー」
クラウド会計ソフトを主力サービスとするfreee株式会社が運営するオウンドメディアです。会計や経理に関わるノウハウやインタビュー記事が掲載されており、経理・財務担当者や経営者にとって役立つ情報が得られます。
オウンドメディア施策の特徴
フリーランスから上場準備を控えている法人まで、幅広い事業主・経営者へのインタビュー記事が多数掲載されていることが「経営ハッカー」の大きな特徴です。自社と事業規模が近い経営者が考えていること・課題と捉えていることがわかり、知見を広げる上で役立ちます。「月次決算」「予実管理」など、関連キーワードから記事を探せる仕組みになっていることも参考になるポイントの1つです。
オウンドメディア施策の成功要因
会計と関連性の高い「経理・財務」「経営・戦略」「働き方改革」など、経営に関わるテーマを幅広く扱っていることが成功要因と考えられます。経理担当者や経営者でなくても役立つ情報が多く、定期的に訪問して情報をチェックしておきたいと思わせる「温度感」があるからです。潜在顧客の視点に立ったカテゴリ設計は、オウンドメディア成功の重要な要素の1つとなるでしょう。
参考)経営ハッカー https://keiei.freee.co.jp
②サイボウズ株式会社「サイボウズ式」
グループウェア「サイボウズ」を提供するサイボウズ株式会社が運営するオウンドメディアです。「新しい価値を生み出すチームのメディア」というサブタイトル通り、働き方や生き方、家族と仕事といった社会人の「個」に焦点を当てたコンテンツが多数掲載されています。
オウンドメディア施策の特徴
「お坊さんの悩みを聞いたら、一般人より闇が深かった」など、一見するとビジネスとはあまり関係のなさそうな記事も数多く掲載されています。一方で、オウンドメディアのタイトルをはじめWebサイトの随所に「サイボウズ」の文字が登場することから、読者は記事に触れるごとに「サイボウズ」という社名・サービス名を目にすることになるでしょう。自然な形でブランディングにつなげている点が、同メディアの大きな特徴といえます。
オウンドメディア施策の成功要因
共感を呼ぶ・感情に訴えるコンテンツを多数投入し、読者を引きつけている点が「サイボウズ式」の成功要因と考えられます。企業担当者向けのオウンドメディアは堅いテイストになりがちですが、同メディアは担当者「個人」に向けて発信している点が重要なポイントです。「誰に何を伝えたいのか」を明確にすることの重要性を伝えている事例といえるでしょう。
参考)サイボウズ式 https://cybozushiki.cybozu.co.jp
③株式会社LIG「LIGブログ」
Webサイト制作事業を営む株式会社LIGによるオウンドメディアです。社員が自ら情報発信するブログとして知られており、Web制作やデザイン、テクノロジー関連のコンテンツが平日は毎日更新されています。
オウンドメディア施策の特徴
記事を執筆している社員の顔が見える点が大きな特徴です。Web制作を軸とした有益な情報を発信する一方で、「真冬に爆速で流しそうめんをやりました」などユーモラスな投稿も少なくありません。結果として社員の方々の様子が伝わるメディアとなっており、Facebookページでは5.7万件の「いいね」を獲得するなど、多くの支持を得ています。
オウンドメディア施策の成功要因
「社員が記事を執筆する」「平日は毎日記事をアップする」といった、自社で決めた運営方針を守り続けていることが成功要因の1つです。毎日書かさず記事を公開し続けるには、相応のリソースと運営体制を整える必要があります。こうした運営方針の徹底が読者の共通理解を促し、着実なファン獲得へとつながった事例といえるでしょう。
参考)LIGブログ https://liginc.co.jp/blog
④株式会社ベーシック「ferret」
Webマーケティング支援事業を展開する株式会社ベーシックによるオウンドメディアです。「マーケターのよりどころ」というサブタイトル通り、マーケティングノウハウを中心に情報を発信しています。リリースからわずか半年間で月間100万PVに達したオウンドメディアの成功事例として有名です。
オウンドメディア施策の特徴
検索エンジンの動向やSNS運用ノウハウなど、マーケティング施策に関する情報を一貫して発信し続けています。企業のマーケティング担当者をターゲットとしていることが明確に打ち出されており、「マーケティング担当者ならチェックしておくべきメディア」として認知されている点が特徴です。
オウンドメディア施策の成功要因
ターゲットを明確に絞り込み、ターゲットのニーズに合ったキーワードを選定している点が成功要因と考えられます。マーケティング施策に役立つ資料をまとめた記事など、有益な情報の発信に徹していることが多くの支持を集めている大きな要因の1つです。基本に忠実なオウンドメディア施策の成功事例といえるでしょう。
参考)ferret https://ferret-plus.com
⑤株式会社マネーフォワード「Money Forward Bizpedia」
金融系Webサービスやスマートフォンアプリを提供している、株式会社マネーフォワードが運営しているオウンドメディアです。経理担当者向けのコンテンツを軸としつつ、ビジネス全般に役立つ情報を発信しています。
オウンドメディア施策の特徴
「バックオフィスの悩みに答えを」というサブタイトル通り、主に経理担当者を対象としたタイムリーな情報を発信している点が特徴です。電子保存義務やインボイス制度への対応など、経理担当者であれば必ず押さえておきたい情報が得られます。
オウンドメディア施策の成功要因
巧みなCTAの設置により、効果的にリード獲得へとつなげている点が大きな成功要因と考えられます。目次下と記事末尾に設置されたクラウドソフトLPへのリンクに加え、サイドバーには無料でダウンロードできる各種資料を掲載しています。有益かつタイムリーな情報発信で読者の信頼を獲得し、潜在顧客の発掘へとつなげている好例といえるでしょう。
参考)Money Forward Bizpedia https://biz.moneyforward.com/blog/
⑥SO Technologies株式会社「LISKUL」
インターネット広告事業を営むSO Technologies株式会社が運営するオウンドメディアです。「日本のすみずみまでWebマーケティングの力を」というコンセプト通り、Webマーケティング担当者に向けた情報発信が中心となっています。
オウンドメディア施策の特徴
ターゲットを「中小・ベンチャー企業のWebマーケティング担当者」に絞り、ターゲットが必要とする情報を発信し続けている点が大きな特徴です。マーケティングツールや用語の概要が1記事内で把握できる構成になっており、必要な情報が網羅されたコンテンツとなっています。
オウンドメディア施策の成功要因
インターネット広告会社として体得してきたノウハウを、惜しみなく発信してきた点が同メディアの成功要因と考えられます。プロフェッショナル集団による情報発信のため、専門性や権威制に疑いの余地がないことは明らかです。自社の強みや専門分野を活かしたオウンドメディアの成功事例といえるでしょう。
参考)LISKUL https://liskul.com
⑦株式会社スマートキャンプ「ボクシルマガジン」
SaaSプラットフォームの提供事業を展開する、株式会社スマートキャンプのオウンドメディアです。クラウドサービスの導入を検討中の企業担当者をメインターゲットとしており、各種ツールの比較検討に役立つ情報を発信しています。
オウンドメディア施策の特徴
「おすすめリート管理ツール10選」「マーケティングツール比較」のように、ツールの比較を軸に情報を発信しています。自社製品も含めた代表的なツールを網羅的に紹介することにより、読者の信頼を獲得している点が特徴です。
オウンドメディア施策の成功要因
同メディアでは、新規記事を増やすだけでなく既存記事のリライトも並行して進めたことが成功要因だったと考えられます。一時はアクセスが伸び悩んだものの、地道にリライトを続けたことで70万UUまで伸ばせました。公開後のコンテンツをメンテナンスしていくことの重要性を示唆している事例といえるでしょう。
参考)ボクシルマガジン https://boxil.jp/mag/
⑧株式会社ベネフィットワン「BOWGL」
企業や官公庁を対象とした福利厚生サービスの導入、および代行を手がける株式会社ベネフィットワンによるオウンドメディアです。主に企業の人事担当者向けに、従業員が快適に働くための福利厚生に関する情報を提供しています。
オウンドメディア施策の特徴
コンテンツのカテゴリは「福利厚生」「健康経営®(※)」「ワークライフバランス」「従業員エンゲージメント」「人材育成」「働き方改革」の6つに分かれており、読者が必要とする情報を探しやすいサイト構成になっています。各コンテンツ内には資料ダウンロードページに遷移するCTAが複数設置されており、より詳しい情報を求める読者のニーズに応える形で自然に行動を促している点が特徴です。
※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
オウンドメディア施策の成功要因
BOWGLの成功要因として、メディアのコンセプトが挙げられます。トップページに「『分かる』から『やってみる』へ」と掲げられている通り、単に記事を読んで納得するだけでなく「行動」するべきである、というメッセージを前面に打ち出しているのです。情報提供をリード獲得へとシンプルにつなげることに成功した事例といえるでしょう。
参考)BOWGL https://bowgl.com
⑨Hubspot Japan株式会社「Hubspotブログ」
CRMプラットフォームの開発・販売を手がける、Hubspot Japan株式会社が運営するオウンドメディアです。ソフトウェアの操作方法を紹介する「Hubspotナレッジベース」の1コーナーとして「Hubspotブログ」を掲載しています。
オウンドメディア施策の特徴
同メディアの大きな特徴として、幅広いユーザーのニーズに応えている点が挙げられます。すでにソフトウェアを利用している既存顧客をはじめ、マーケティングに興味のある企業担当者、調査データを閲覧したいビジネスパーソンなど、多様なターゲットが想定されているのです。
オウンドメディア施策の成功要因
読者が各自のニーズに合わせて選択できるよう、多彩なCTAを用意していることが同メディアの成功要因と考えられます。たとえば、メルマガ登録や資料ダウンロード、製品の無料デモ申込みといったように、検討段階に応じて適した行動を選択可能です。見込み客のニーズを想定したCTAの設置方法を検討する際、参考にしておきたいオウンドメディアの事例といえるでしょう。
参考)Hubspotブログ https://blog.hubspot.jp/
⑩株式会社ネオキャリア「みんなの採用部」
人材サービスの代理店事業を展開する、株式会社ネオキャリアによるオウンドメディアです。企業の採用担当者をターゲットとしており、人材採用に関する課題解決につながる情報を幅広く提供しています。
オウンドメディア施策の特徴
「求人媒体の料金一覧」のほか、タイムリーな調査レポートを多数掲載することにより、企業の採用担当者が求める情報が網羅されている点が特徴です。採用担当者の視点に立ち、各社が抱えている悩みの解決に徹することで信頼獲得につなげています。
オウンドメディア施策の成功要因
見込み客のニーズを徹底的に分析し、コンテンツに反映させている点が同メディアの成功要因と考えられます。採用活動においてネックとなりやすい費用面を明確に紹介することで、読者から「頼られる」メディアを実現しているのです。コンテンツの方向性を検討する際に、ぜひ参考にしていただきたい事例といえるでしょう。
参考)みんなの採用部 https://www.neo-career.co.jp/humanresource/
まとめ
さまざまな業種のオウンドメディア成功事例10選を紹介してきました。オウンドメディアの特徴や、掲載されているコンテンツの方向性は多種多様です。しかしその中でも、成功しているメディアは明確な運営方針を掲げており、メディアとしての特色やメッセージ性が打ち出されていることが実感できたのではないでしょうか。今回紹介した事例を参考に、ぜひ自社のオウンドメディア施策を検討してみてください。