はじめに、ウェビナーを開催する目的と訴求するべきターゲットを明確にします。目的とターゲットが定まることによって、ウェビナーのテーマや内容も必然的に絞り込まれていくからです。
たとえば自社の「クラウド会計ソフト」を知ってもらうことが目的の場合、ターゲットとして「経理部門の担当者・役職者」や「自営業者・フリーランス」などが想定されます。こうしたターゲットに適したテーマを設定するなら、「記帳業務を効率化する方法」や「初心者にも実践できるスモールビジネスの経理業務」などが適しているでしょう。このように、目的とターゲットから逆算してウェビナーのテーマを絞り込んでいくのがポイントです。
2. 配信ツールを選定する
次に、ウェビナーの配信ツールを選定します。配信ツールによって機能性や対応している画質が異なるため、自社の目的やウェビナーの内容に合ったツールを選ぶことが大切です。配信ツールを選定する際には、下記の観点から比較検討するとよいでしょう。
・一回あたりの配信可能時間
・最大参加人数の上限
・画質、音質
・画面共有やアンケート機能の有無
・参加方法(参加用URL発行など、わかりやすい方法が提供されているか)
配信ツールによっては、プランによって配信可能時間や最大参加人数の上限に差がある場合があります。自社が想定している用途に対応可能か、十分に確認しておくことが重要です。
3. ウェビナーを告知する
ウェビナーの内容や配信ツールが決定したら、ウェビナーの告知へと移ります。参加者のターゲット層に効果的に告知内容が発信できる媒体を選ぶのがポイントです。効果的な告知方法の例として、下記の媒体が挙げられます。
・自社ホームページ
・SNS・SNS広告
・セミナー告知サイト
・DM(メール・ハガキ・FAXなど)
・ハウスリスト
ウェビナーの内容によっては、新規の見込み客だけでなく既存顧客に参加してもらうことで、有益な情報提供の場となる可能性があります。また、既存顧客からの紹介により、新たな参加者の獲得につながることも十分にあり得るでしょう。
4. 申込者に事前のヒアリングを実施する
ウェビナー申込者を対象に、開催前のヒアリングを実施します。ヒアリングを実施する目的は主に2つです。
1つ目の目的は、参加意欲の維持です。とくに早期に申し込んだ人の場合、ウェビナー当日まで期間が空くことになります。この期間にウェビナーの存在を忘れてしまったり、当初ほど参加の必要性を感じなくなったりすることも否定できません。運営元の企業から連絡が入ることにより、参加意欲を持続させる効果が期待できます。
2つ目の目的は、開催前に参加者の大まかなニーズを把握しておくことです。求めている情報や必要としているノウハウがわかっていれば、そこに重点を置いてウェビナーの構成を再検討できます。結果としてウェビナー参加者の満足度を高め、運営企業に対する信頼感をより強化できるでしょう。
5. ウェビナーを開催する
ウェビナー開催当日は、参加者自らが発言したり、作業をしたりするためのコンテンツを用意しておくことをおすすめします。ウェビナーは場所を選ばず気軽に参加できる反面、開催中に離脱することも簡単にできてしまう点がデメリットです。参加者はウェビナーの内容に興味がないと判断した時点で、「退室」や「通話終了」のボタンを押してしまうおそれがあります。
一方的な情報伝達に終始することのないよう、ウェビナー中もチャット機能を活用して質問を受け付けたり、参加者同士でペアを組んで作業を進める時間を設けたりするなど、途中離脱を防ぐ工夫をすることが重要です。
6. 参加者へのフォローを行う
ウェビナー終了後は、受講のお礼を兼ねて参加者へのフォローを実施しましょう。事後アンケートを実施したり、お礼メールを兼ねて自社の商品・サービス資料を送付したりする方法が想定されます。
仮にウェビナー内で紹介された商品・サービスに関心を寄せていたとしても、ウェビナーが終わると時間の経過とともに記憶が薄れてしまいがちです。ウェビナーを開催するだけで終わってしまわないよう、参加者が次の行動を起こすきっかけをつくる必要があります。また、アンケート結果を集計・分析することで、次回のウェビナーに活かすための改善点を洗い出しておくことも大切なポイントです。
効果的なウェビナー運営のポイント
ウェビナーを効果的に運営するには、どのような点に留意しておく必要があるのでしょうか。とくに意識しておきたい5つのポイントを紹介します。
目的に合った配信ツールを選定する
配信ツールを選ぶ際には、ウェビナーの目的や用途に合ったツールを選ぶことが大切です。たとえば、参加者にとって参加しやすい仕組みになっているか、配信可能時間や最大参加人数は十分に確保されているか、画質や音質に問題はないか、といった点を実際に試用して確認しておくことをおすすめします。
参加者にとって使いにくいツールを選んでしまうと、参加意欲がある人であってもツールの操作性が原因で参加を見合わせるおそれがあります。あるいは、想定を超える参加者が集まった場合、最大参加人数の関係上、申し込みを打ち切らなくてはならない可能性も否定できません。こうした機会損失を防ぐためにも、目的に合った配信ツールを選びましょう。
アフターフォローを徹底する
ウェビナー開催後のフォローは、参加者の記憶が新鮮なうちに実施するのが基本です。何週間も経過してから連絡を入れた場合、すでにウェビナーの記憶が薄れ、興味関心が移り変わっている可能性があります。
ウェビナー当日〜数日以内には、アフターフォローを実施するよう徹底しましょう。参加者が多い場合には、アンケート結果を参考に優先順位を付けるなどして、明確なニーズのある参加者を取りこぼさないようにすることが重要です。
オンデマンド配信も取り入れる
過去のウェビナーを画面収録した映像や、あらかじめ制作しておいた解説動画などを活用するのもおすすめの方法です。オンデマンド配信を取り入れることによって、品質の安定したウェビナーをより少ないリソースで開催できます。
また、オンデマンド配信はウェビナー当日に都合がつかず、参加できなかった人へのフォローにも活用できます。当日欠席した申込者に当日のアーカイブ映像を配信することで、次回のウェビナー参加を促す効果も期待できるでしょう。オンデマンド配信を取り入れやすいことはオフラインのセミナーにはないメリットのため、積極的に活用してみてはいかがでしょうか。
開催後にデータ分析と総括を行う
ウェビナー参加率や回収したアンケートの結果など、収集した各種データの分析と総括を行うことも大切なポイントです。アンケートに「〇〇について詳しく聞けてよかった」「〇〇について詳しく聞きたかった」といった回答が見られるようなら、その点を次回以降のウェビナーに反映させることで参加者の満足度を高められる可能性があります。
収集したデータは、見込み客の育成にも役立ちます。アンケートの回答で言及されていることに参加者は高い関心を寄せているケースが多いことから、興味関心やニーズを把握した上でコミュニケーションを図っていくことも可能です。
商品・サービスを過度に売り込まない
ウェビナー内で自社の商品やサービスを過度に売り込むのは避けましょう。ウェビナー参加者の多くは、あくまでも情報収集を目的に受講しています。開催企業の宣伝が目的のウェビナーのように映ってしまうと、途中離脱が増加する結果を招きかねません。
ウェビナーはあくまでも見込み客との接点を築くための場です。自社が現時点で提供できる情報やノウハウは余すことなく提供し、認知拡大や信頼関係の醸成に注力する必要があります。
ウェビナー成功のコツ
ウェビナーを成功させるためのコツを紹介します。ウェビナーの効果を最大限に引き出すには、下記の6つのコツを押さえておくことが大切です。
1. ウェビナーのタイトル・概要文と登壇内容を統一させる
ウェビナーのタイトルや概要文と、実際の内容を一致させることは非常に重要なポイントの1つです。タイトルであおりすぎてしまうと参加者の期待値が高くなり、その分だけ期待に応えるためのハードルが高くなります。期待値調整はタイトル・概要文を検討する際に必須の観点といえるでしょう。たとえば、初心者向けの内容のウェビナーであれば、タイトルを「初心者向け〇〇」とするなど、タイトルにターゲットを記載するのは効果的な方法です。
タイトル・概要文と実際の内容に齟齬がなければ、アンケートを実施した際の満足度も自然と向上します。また、参加者に占める自社のターゲット含有率を高めることも可能です。
2. ウェビナーの役割を理解した上で、ウェビナー全体を設計する
カンファレンス・共催・自社主催といった開催形態に合わせてウェビナーの役割を適切に捉え、使い分けていくことも大切なポイントの1つです。ウェビナーと一口にいっても、それぞれ果たすべき役割は大きく異なります。
【開催形態別・ウェビナーが果たす役割のイメージ】
・カンファレンス・共催:認知獲得・新規獲得
・共催・自社開催:興味醸成・より自社に興味をもってもらうこと
・自社主催:具体的なサービスや事例の紹介を通じて、商談化・受注へとつなげること
上記の役割ごとに使い分けていくことで、新規獲得したリードを次のウェビナーへと誘導し、自社について詳しくなってもらえる可能性が高まります。新規獲得とリードナーチャリングを両立させるための施策として、役割に応じたウェビナー設計を取り入れてみてはいかがでしょうか。
3. 他社と共同開催する
ウェビナーは一社が単独で開催するよりも、複数社で共同開催するほうが高い集客効果を得られます。一般的に、単独開催した場合と比べて共同開催した場合の集客力は約2〜5倍になるといわれているほどです。
共同開催が集客力の増強につながる要因として、各社のハウスリストから集客できる点が挙げられます。自社が現状接点を築けていない層にも参加を促せることから、より幅広い層に自社の存在を知ってもらうための機会を提供できるでしょう。
また、共同開催においても目的とターゲットを各社で擦り合わせる必要があります。取り決める際にテーマが先行しがちですが、目的とターゲットが合わないままだと参加者にとって期待する内容と異なるケースが発生します。
目的とターゲットを擦り合わせた後は、全体テーマと各社テーマを決め、一貫したテーマになっているのか確認しましょう。複数社で目的とターゲットの共通認識があっても、テーマにばらつきがあると参加者が理解しにくいウェビナーとなってしまいます。
4. アンケートの満足度が低い参加者こそ手厚くフォロー
ウェビナー後のアンケート結果が芳しくなかった参加者ほど、手厚くフォローを実施しましょう。満足度が低いということは、求めていた情報を得られなかったことを意味しています。その不満点を解消することにより、信頼関係の醸成につながるケースは決して少なくありません。
まずは参加者にコンタクトを取り、不満に感じた点を具体的にヒアリングすることが大切です。その上で、要望に合った資料や情報を的確に提供することによって、「要望に応えてくれる企業」として認知される可能性が高まります。
5. 当日不参加者はアプローチするチャンス
ウェビナーに申し込んでいたものの、当日不参加となった人については、アプローチするチャンスといえます。個別にコンタクトを取り、ニーズを確認した上でウェビナー内容をカスタマイズした資料や情報を提供しましょう。
こうしたきめ細かなフォローを実施することにより、「自社のためにここまでしてくれる企業のようだ」といった好印象を与えられます。資料提供を機に、商談のアポイントを獲得できる可能性も十分にあるでしょう。当日不参加者を放置せず、アプローチのチャンスと捉えることが大切です。
6. 次のアポイントにつなげる仕掛けを用意しておく
ウェビナー開催はあくまでもきっかけづくりの1つに過ぎません。ウェビナーを通じて自社に関心を寄せ、問い合わせや申し込みにつながるケースもないとはいえないものの、自社側からアポイントにつながる仕掛けを用意しておかなければ、次のアポイントにつながらないケースのほうが多いと考えられます。
たとえば、アンケート回答者に特典として資料を送付し、資料の内容について説明するための時間を設けてもらうのは、アポイントを取得する上で効果的な手法といえます。アポイントが途切れない限り商談機会を得られる可能性があるため、ウェビナー開催という「点」の施策を「線」の活動へとつなげていくことが重要です。
アポイントを試みる際には単に架電するのではなく、ターゲットが興味を寄せそうな他のコンテンツを提供すると効果的です。ウェビナー視聴者に向けて、登壇内容に合ったホワイトペーパー(お役立ち資料)をアンケート回答後に画面上で提供すると、ページに遷移した人のCVR(資料ダウンロード率)が40〜50%以上に向上するケースもあります。関連するコンテンツ・コラムなどをウェビナー中にあわせて紹介しておくことにより、実際にコンテンツを見た参加者は自社をより知見のある会社と判断し、信頼が醸成される効果も期待できるでしょう。